イングランドは初のEURO王者になれるか 気になる監督の「弱さ」と英国民の「分裂」
【イングランド発コラム】無失点で無敗も…低調だったグループリーグ3試合のパフォーマンス
英国在住歴も4半世紀を越えて、30年に近づくと、それなりに現地の友人も増える。だからもちろん、連合王国の国境を越えて、今回の欧州選手権(EURO)で同組になったイングランドとスコットランドの両国に友人がいる。
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グループDの最終戦が終わったつい先日、SNS上でイングランドの友人がある投稿をシェアした。それは「FAIR PLAY BILLY GILMOUR, FOR GIVING SCOTLAND THEIR ONLY POSITIVE RESULT IN THE EUROS」(ビリー・ギルモアのフェアープレー! 今回のEUROで唯一ポジティブな結果)というものだ。
例えば、日本でも関東と関西の“対抗心”がある。もう長年日本に暮らしていないので、それが今も同じなのか、そこは自信がないが、筆者の認識では関東の人間は関西人を“遠慮がなく無粋”と語り、関西人は関東人を“気取ったいけすかない連中”と言ったりする。
そんな“対抗心”は、英国内にも当然ある。しかもこれはイングランドが周辺国を力でねじ伏せた歴史もあり、もっと苛烈で激しいものだ。
虐げたほうのイングランドは憎むというより、連合王国の同胞でありながら、スコットランドを下に見る傾向がある。例えイングランドがそう思わなくても、スコットランドは蔑まれていると強く思っている。近年のスコットランドに独立の機運が高まった底辺にも、そういう気分は強い。
それはさておき、この投稿にもそんなイングランドのスコットランドをバカにする気分がありありと表れている。
今回のスコットランドは3戦して1分2敗。わずかに1ゴールしか決められず、勝ち点「1」で24カ国中、下から3番目の成績で8カ国のグループリーグ敗退組に含まれた。
確かに惨めな成績だ。そんな散々な敗退をイングランド人がギルモアの、グループリーグ最終戦前に新型コロナウイルス感染テストで陽性(ポジティブ)反応が出たことだけが「明るい結果」だと揶揄したわけだ。
これは酷い。しかしイングランドとスコットランドの典型的な反目例という一面もあり、面白くもあったので、日本の友人に伝えたいと思い、筆者もこの投稿をシェアした。
しかしこのシェアに、スコットランドの友人たちが反応した。
筆者が日本人だから、この投稿をシェアしたことに対して単純に罵詈雑言をぶつけてくるということはなかったが、ささやかながらも彼ら彼女らの書き込みのなかに“傷つけられた”という感情を見つけた。
そこで「確かにクオリティーは足りなかったけど、君たちの代表は持てる力の100%をピッチに捧げたじゃないか。そこは評価しないと。イングランドはその真逆の問題を抱えている」と書き込み、敗退を慰めた。
そうしたら今度はイングランドの友人が、「残りものには福があると言う。良いところはトーナメントステージで発揮するんだ」と書き込んできた。
まあ、最初にギルモアに関する投稿をSNSでシェアした自分が悪いのだが、全くもって面倒くさいことになってしまったと思い、苦笑した。
しかし本当にイングランドは、決勝トーナメントでグループリーグとは見違えるようなサッカーを見せてくれるのだろうか。
森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。