ドイツ代表、EURO“死の組”突破へ議論白熱 レーブ監督、MF陣の起用法を巡り反論

レーブ監督はクロースに全幅の信頼「類稀なプレーを見せてくれる」

 クロースとポジションを同じくするシュバインシュタイガーも、当時はプレーが淡白とか、ミスが目につくとことあるごとに批判を受けていた。だが、大会を戦うなかで試合を重ねるごとに成長し、決勝戦では顔に裂傷を負いながらも一度も怯むことなく体を張り、見事なまでにボールを奪取し続けていた。シュバインシュタイガーも元はオフェンシブな選手だ。それこそウイングが本職だった選手だ。だが優れた選手は変わっていく。自分のプレーを順応させ、深化させ、そして成熟していくのだ。

 クロースは、ロシアW杯後にドイツ代表が抜本的に世代交代を進めようとした時でも、レーブが代表の主軸として全幅の信頼を置いてきた選手だ。

「トニはまさに手本となるプロフェッショナルな選手だ。彼以上にこの仕事のために準備をできる選手はいない。そして彼の持つゲームを読む能力、そして卓越したテクニック。欠かすことのできない選手だ。難しい試合で、コントロールが必要となる試合でこそ、類稀なプレーを見せてくれるのがトニなのだ」

 レーブは初戦のフランスについて、次のように話している。

「フランス代表は世界で最も柔軟性のあるチームだ。どのようにプレーをしてくるかは分かっているが、それでもどんなプレーをするかは予測することが難しい。ものすごくフレキシビリティーがある。個々の選手が秘めている能力はすごく高い」

 間違いない。フランスは世界に名だたる名プレーヤーが、各ポジションに名を連ねる。ポルトガルもそうだ。どちらも、それこそ優勝しても不思議ではない国々だ。どのように守るかという明確なコンセプトが浸透しなければならないのは、試合を上手く運ぶための必須条件だろう。でも、それは守備的な選手だけをピッチに送るということが解決策になるということではない。

「試合のいかなる状況でも、最高レベルの集中力でプレーしなければならない」

 レーブはそう言葉に力を込めていた。集中力を持って取り組むためには、やるべきことが明確になっていなければならない。

 誰が、どこで、どのように、どんなタスクを担うのか。

 キミッヒがボランチでプレーすべきか否かの前に、守備ライン前の危険なスペースで1人の選手がなんとかしなければならない状況を、チームとしてどのようにケアするのかが整理されなければ、いずれにしても、この厳しいグループを勝ち抜くことなどできない。

 ドイツはどのように方程式を組み立ててくるのだろう。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)


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中野吉之伴

1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

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