マンU、サポーターとの公開討論会は火に油? “勝利より金”の嫌悪感を払拭できるか

資産価値は4倍、グレイザー一家にとって勝てないことはさほど苦痛でない?

 この分野にかけてはレアル、バルセロナの追随を許さず、まさに世界一。今回の欧州SL参加騒動の責任を取って今年限りの勇退となったCEOのエド・ウッドワードは、このコマーシャル関連の売り上げを大きく伸ばして、会計士でありながら、「サッカー素人」と揶揄されながらも、世界最大の一つである超ビッグクラブの最高経営責任者となった。

 ところが、ファーガソン監督が去って、その神通力も去ると、サポーターはスポンサー集めだけが上手いクラブの経営方針に徐々に苛立ちを募らせ始めていた。

 なんせ、1992-93シーズンにプレミアリーグが設立されてから2012-13シーズンにかけて、毎年のように優勝争いをしていたチームが、CL出場権を得るにも四苦八苦するようになってしまったのだから、勝つことに慣れていたサポーターには堪らない。

 一方、先代のマルコムは亡くなったが、ジョエルを筆頭に6人の兄弟がユナイテッドの株主となり、毎年30億円とも言われる配当金が入ってくるグレイザー一家にとって、勝てないことはさほど苦痛でないように見える。

 買収金は前述した通り、クラブが毎年の稼ぎの中から勝手に払ってくれるうえ、2021年の米誌「フォーブス」の試算では現在のユナイテッドの資産価値は42億ドル(約4620億円)。買収当時の1170億円の軽く4倍となっているのだから、笑いが止まらない。

 投機で買った不動産がものすごいブームに乗って、買った金額の4倍になって、しかも不労所得のような莫大な家賃収入を生み、ローンを賄うどころか、毎年かなりの収入をもたらす――。そんな感じだろうか。ともかく、先代マルコム・グレイザーがユナイテッドを優良な投資物件と見なした先見の明は、素晴らしかったと言うしかない。

 と、ここまでグレイザー一家のユナイテッドオーナーとしての役得を記したところで、今季終了後、なるべく早くに公開討論会を開くと約束した公開書簡の話に戻す。

 そのなかでジョエル・グレイザーは「私と私の家族は深くマンチェスター・ユナイテッドを気にかけ、その価値観と伝統を尊重し、長期に渡って強さを維持する責任を痛感している」という一文があるが、その根元にある気持ちがユナイテッドの勝利を人生の最大の喜びとするサポーターのそれと一致するものなのか、公開討論会ではそこが最大の焦点となるだろうし、サポーターを納得させなければ、それこそ現在の危機がさらに深刻となる。

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森 昌利

1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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