マンU、サポーターとの公開討論会は火に油? “勝利より金”の嫌悪感を払拭できるか

リバプール戦の前には試合延期になるほどのデモが発生【写真:Getty Images】
リバプール戦の前には試合延期になるほどのデモが発生【写真:Getty Images】

【英国発ニュースの“深層”】マンUでなぜ最も激しい抗議運動が起きたのか

 マンチェスター・ユナイテッドのオーナーであるジョエル・グレイザーが公開書簡を提出し、今季終了後直ちにサポーターとの公開討論会を開くことを提案した。

「BBC」をはじめ、英国メディアが一斉にこの話題を取り上げているが、これも去る5月2日に1万人のサポーターが集結し、2名の警官が負傷、200人余のピッチ乱入までに発展した抗議運動で、同日予定されていた伝統のリバプール戦がプレミアリーグ史上初となる“デモによる試合延期”になったことが最大の原因だ。

 この激しい抗議運動を見ても、今回の欧州スーパーリーグ(SL)に参加表明したプレミアのいわゆる“ビッグ6”のなかで、ユナイテッドが最も激しいサポーターの抗議運動に直面していることは一目瞭然だ。

 それは、なぜか。

 無論、プレミアの順位とは無関係に、すなわち国内リーグの結果を無意味なものにしてしまう一部エリートクラブの“永久メンバー制”に対して激怒しただろう。しかし、最大の理由はアレックス・ファーガソンが勇退して以来、プレミア優勝から8年も遠ざかっているからだ。

 それに加えて、グレイザー一家のまさしく利益と資産価値の上昇を優先するアメリカ的なオーナー・シップがある。これとサッカーを“フットボール”と呼び、伝統的国技とするイングランドのサポーターが抱く“クラブ愛”との相性が非常に悪い。

 まずサポーターを激怒させたのは、2005年にユナイテッド株を100%取得した先代のマルコム・グレイザーが、その買収金のローンをすべてクラブにかぶせたことである。つまり結果的には自己資金を投入することなく、イングランド最強クラブを手に入れた。

 すでに16年前の話になるが、当時の買収金額が7億5000万ポンド(約1170億円)。それがそのままクラブの負債となり、健全経営だったユナイテッドが大赤字のクラブとなった。現在もそのローンは4億5500万ポンド(約709億8000万円)も残っている。

 しかしそんな負債を抱えながらも、当時、不世出の大監督ファーガソンに率いられたチームは常にプレミア、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)で優勝争いを演じ、数々のトロフィーを勝ち取って、レアル・マドリード、バルセロナとともに欧州を牛耳った。

 そしてその強さとともにグローバル的な人気を勝ち取り、莫大な広告収入も膨れ上がった。

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森 昌利

1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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