スーパーリーグ構想が「読み違えた」ものとは? 欧州ファンが譲らなかった原点

スーパーリーグ構想に抗議する欧州ファン【写真:Getty Images】
スーパーリーグ構想に抗議する欧州ファン【写真:Getty Images】

【識者コラム】頓挫したスーパーリーグ構想、ファンを無視したことが失敗の要因

 怒涛の展開だった。突如として12のビッグクラブがスーパーリーグの発足に同意したと報じられ、FIFAとUEFAは最大限の非難を浴びせながらワールドカップ(W杯)やEUROからの追放を示唆、各国リーグも一斉に反対表明。選手、監督、ファンからも反対意見が膨れ上がり、2日後にはプレミアリーグの6クラブが撤退を表明。アトレティコ・マドリードやセリエAのクラブもスーパーリーグの発足は不可能とギブアップした。準備金を出資するはずだったJPモルガンが「読み違えた」として取りやめを決め、スーパーリーグ構想は1週間と経たずに塵と消えた。

 ミッドウィークにビッグクラブ同士のスーパーリーグを開催することで放映権料を吊り上げ、コロナ禍で生じた莫大な損失をなんとかしたい一心だったのだろう。ただ、スーパーリーグの開催はビッグクラブ抜きのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)形骸化を意味するから、CLをドル箱としていたUEFAは当然全力で阻止にかかった。要は、ビッグクラブとUEFAの利権争いである。

 UEFAはすでにビッグクラブに配慮したCL拡大案を提示していたが、はっきりいって日程を破綻に追い込む愚案である。EUROやネーションズリーグに出場できないという脅しも全く効くはずがない。FIFAのW杯からの締め出しも、W杯の価値を下げるだけだ。この戦いでUEFA、FIFAには切り札が何もなかった。

 それなのにスーパーリーグが瓦解したのは、ファンを無視して事を進めてしまったことがほぼすべてだろう。

 JPモルガンがスーパーリーグに投資しようとしたのは、ヨーロッパサッカーは「儲かる」と考えたからだ。現行制度を変えれば、つまり米国式の“閉じたリーグ”にすれば、必ず儲かるはずだ、と。ヨーロッパのビッグクラブには、すでに多くの米国人投資家がオーナーになっている。ヨーロッパサッカーは投資対象であり、かつてのタニマチ的なオーナーに取って代わりつつあった。

 スーパーリーグは投資家たちのためのサッカーであり、ファンを完全に置き去りにして話が進められた。しかも、それはヨーロッパサッカー界の仕組みを大きく変えることを意味する。ヨーロッパは基本的に弱肉強食ではあるが、小さなクラブでもリーグ優勝やカップ優勝する可能性は、理論上残されている。完全な競争を保証したうえでの弱肉強食の世界だ。米国のプロスポーツはそうではない。エリートだけの閉じたリーグによる興行というやり方だ。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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