J2金沢、異例の“アパレルショップ戦略”の意味 クラブへの「入口をどう作るか」

金沢市内に「hummel×WAYZ期間限定コンセプトショップ」を出店【写真:村田 亘】
金沢市内に「hummel×WAYZ期間限定コンセプトショップ」を出店【写真:村田 亘】

「サッカーのショップだと分かってしまうと、どうしても敷居が高くなってしまう」

――WAYZとはどんなブランドですか?
「2019年に立ち上げたアパレルブランドです。史上初めてJクラブが独自に立ち上げたアパレルブランドで、自分らしい日常を応援するということをコンセプトとしています。もともとは2019年の夏に3rdユニフォームとコンセプトエンブレムという少しグラフィカルなエンブレムをつくったんですけど、それだけで終わらせるのはもったいないのでアパレルに展開しました。普段からさりげなく365日使っていただけるようなアパレルを作ろうという思いから始まったんです」

――そのブランドと今シーズンからユニフォームサプライヤーになったヒュンメルが協力する形でオープンさせたショップですね。
「ヒュンメルさんも自社をライフスタイルスポーツブランドとおっしゃっているように、日常で身につけられるアパレルにすごく力を入れています。もともとヒュンメルさんと組もうと思ったのもそういったところが魅力でしたし、先方にもWAYZに興味を持っていただきました。そういった部分を強化することで、うちもヒュンメルさんも他クラブや他メーカーと差別化を図れるかなと思っていましたし、契約の話を詰める段階から『いずれはショップを』という話をしていました。こんなにうまく最初から大々的にできるとは思っていませんでしたけどね」

――最初からヒュンメルと合同で進んだプロジェクトだったんですか?
「WAYZだけだとラインナップ数も限られていますし、ヒュンメルさんも北陸で買えるショップが少なくなっていたので、どう補っていくかという話はしていました。せっかくサプライヤーになっても手に取ってみてもらう機会がないのは寂しいですし、日常的にヒュンメルさんを着ていただく人が増えて、そこからツエーゲンが連想されることも大事だなって。今年のホーム開幕戦ではヒュンメルさんのアパレルを着た方がたくさん来場されたんですけど、そういう意味でもうれしかったですね」

――ユニフォームなどのグッズを一切置かないショップというのは、クラブの宣伝にならない可能性もありますよね。
「ツエーゲンというクラブを県内のもっとたくさんの人に知っていただくにはどうするか。そのためには入口をどう作るかだと思っています。サッカーに興味のない方にとっては、サッカーのショップだと分かってしまうとどうしても敷居が高くなってしまいます。WAYZを立ち上げたときから、今までサッカーに縁もゆかりもなかった人に手に取ってもらって、結果として『これはツエーゲンが展開しているブランドなんだ』ということで関心を持っていただきたいと考えていました。ショップの立地も含めて、今まで接点がなかった方とコンタクトが取れる場所なので、あまりサッカー色が強いと立ち寄ってもらえないのではないかと思って、あえてそういう形でやってみました」

――それでも「少しはグッズも置こうよ」という話はあったのではありませんか?
「『ユニフォームの予約受付ぐらいはやってもいいのでは』という意見もありましたが、僕らとしてはヒュンメルさんと組んで、『これからはアパレルに力を入れていくんだ』ということを既存のファン・サポーターの方に伝える場でもあったので、振り切ったほうがいいかなと。結果としては中途半端にやらなかったことが、すごく良かったのかなと思います」

――Jクラブのなかには街中にグッズショップを展開しているクラブもありますが、そういったものとはまったく違うコンセプトだったんですね。
「街中にショップを置くのも、今まで知らなかった人に知っていただくことが目的のはずなんですけど、結果としては熱心なファンの方が集まって一見さんが入りにくい場所になってしまいがちです。次に実店舗を出す場合は違った方針も考えますが、最初としてはこれでよかったかなと思います」

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