Jクラブ編成に警鐘「マイナスしかない」 鹿島重鎮が持論…“過剰”で「次が育たない」

鈴木満氏が現代のクラブ編成に言及
常勝軍団・鹿島アントラーズの礎を築いた男、フットボールアドバイザー鈴木満氏。ジーコから「プロのフロント」のあり方を叩き込まれ、30年以上にわたり強化の最前線に立ち続けてきた重鎮は、勝利の方程式を数字ではなく空気で読み解く。そんな稀代の勝負師が、チーム編成において最も恐れるものはライバルの補強でも、主力の怪我でもない。“過剰な戦力”だ。(取材・文=森雅史/全5回の2回目)
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「僕の中で、一番いい適正人数は練習効率とチームへの参画意識の維持のために28人。怪我人等も配慮してプラス4人の、計28~32人だと思っていました」
ゴールキーパー4人に、フィールドプレーヤー24人。これが鈴木満氏の弾き出した「黄金比」だ。近年のJリーグは交代枠が5人に増え、ベンチ入り人数も最大20人(以前は18人)に拡大された。過密日程を乗り切るために、多くのクラブが適正人数人を超える選手を抱える傾向にあるが、その風潮に警鐘を鳴らす。
「選手を増やして、ベンチにも入れない、試合に出られないという選手が増えれば、どうしても選手の(チームへの)参画意識もなくなります。出られない選手は不満を抱えて、ストレスも抱える。それがネガティブな要因にもなるんですよ。戦力が過剰になると、過当競争になる。過当競争はマイナスでしかない」
30人を大きく超える選手がいて、試合に出られるスタメン11人と交代5人の最大16人。ベンチにすら入れない選手が10人以上いれば、チームの空気は淀みやすいと考える。哲学はシンプル。競争は必要だが、健全でなければならない。控え選手にも「頑張れば出番がある」と思わせて参画意識を持たせ、そして練習効率を考えると28人程度が理想なのだ。
昨年の鹿島は怪我人が続出し、一時的に人数不足に陥ったが、鹿島は安易な人数合わせをしなかった。代わりにアカデミーとの連携を最大限に機能させた。
「今はユースから選手を練習に呼べる体制が作れている」
足りない時はユースで補い、質を落とさずに練習効率を維持する。これもまた、長年かけて築き上げた「適正戦力」を維持するためのシステムだ。
もっともこれは鹿島だからこそ取ることが出来た手法だ。アカデミーが充実していないチームは、ユースの選手を登録しようと思っても難しい。そのためにどうしても登録人数を増やさざるを得ない。トップチームにだけ目を向けていたわけではない鹿島ならではの対応方法だ。
また鈴木氏はかつて、川崎フロンターレの庄子春男GM(当時)に語ったという言葉を明かした。「獲るのも編成だけど、出すのも編成だよ」。チーム編成とは、いい選手を獲得するだけではないのだ。
功労者や、まだ力の衰えていないベテランを放出することは、強化担当者にとって最も辛い仕事の一つだ。それでも鈴木氏は放出を躊躇しない。
「ここで頑張ってくれて、功績もあったけど、でもこのタイミングで出さないと次が育たない」
かつて秋田豊が健在なうちに岩政大樹を起用した。ヨーロッパでプレーしていた小笠原満男や中田浩二が帰還しそうになったときは、受け入れるために戦力を調整した。中盤の構成が変われば、本田泰人のようなレジェンドであっても聖域にしなかった。
「その出し入れをうまくやっていかないといけないんです。正解だったかどうかはわかりませんけど、そうしていかないといけないんです」
非情にも見える新陳代謝こそが、組織の硬直化を防ぎ、鹿島を常勝軍団たらしめてきた。「競争」と「結束」という相反する二つの要素を両立させるために、鹿島は今日もしっかりとした計算尺でチームを測り続けている。
一方で、契約を終えるときには「今後、鹿島では出番が減るかもしれないが、他のチームならレギュラーでプレーできるはず」という思惑も働いている。もしも血も涙もない判断ばかりなら、その選手はもう二度と鹿島には寄りつかないだろう。だが鹿島のスタッフにはOBが多いことも事実だ。そこから垣間見える哲学は、「28人」という数字だけで鹿島が人事を考えているわけではないというフィロソフィー。それなしに鹿島が強豪であり続けたことはなかっただろう。
(森雅史 / Masafumi Mori)

森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。



















