田中陽子、人生観を変えた震災の経験 “今の自分”を作った福島への思い【#これから私は】

「東北のために」とチーム一丸でU-20ワールドカップを戦った(写真右)【写真:Getty Images】
「東北のために」とチーム一丸でU-20ワールドカップを戦った(写真右)【写真:Getty Images】

山口出身の田中にとって福島は第2の故郷「今の自分が作られていった場所」

 東日本大震災の経験は、田中の人生観や価値観を大きく変えたという。「命の大切さ」と「日常の幸せ」を改めて感じるとともに、サッカーに関しても「誰かのために」という思いが強くなった。“ヤングなでしこ”の愛称で一世を風靡し、大会3位に輝いた2012年のU-20ワールドカップは、「東北のために」とチームが一致団結した結果だったと振り返る。

「(震災で)人生観は確実に変わりました。私が住んでいた楢葉町の人は7割くらい引っ越して、戻ってきていません。地元に戻れない、住めないのは複雑だし、悲しい。日々を大事にしようと心に決めました。震災の翌年にU-20ワールドカップが日本での開催だったので、東北のために頑張りたいという気持ちが強くて、『自分のためにサッカーをやる』から、初めて『人のためにやりたい』と思いました。グループリーグでは宮城も会場になりましたが、あの時期にサッカーの試合をできることが奇跡みたいなもの。私もチームも、東北のためにプレーしました。それが結果につながっていると感じたし、持っている力以上のものが出せたと思います」

 田中は震災後、3月11日には自身の考えや実際に目にしたものを、SNSなどを通じて発信してきた。福島の楢葉中、富岡高に通いながら拠点であるJヴィレッジでサッカーに打ち込んだ約5年間への思いが、その原動力だ。

「福島は私にとって第2の故郷。中学・高校と一番記憶があって楽しい時期で、“今までとは違う自分”ができた場所なんです。それまでは山口の実家で、その世界しか見えていなかった。でも、福島で集団生活をするなかで刺激がたくさんあって、今の自分が作られていったのでやっぱり思いは強いです」

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