「ミスを恐れる」日本の選手たち ストイコビッチは16歳の頃から「自信満々だった」

ズドラブコ・ゼムノビッチ氏とドラガン・ストイコビッチ【写真:本人提供】
ズドラブコ・ゼムノビッチ氏とドラガン・ストイコビッチ【写真:本人提供】

【ゼムノビッチ監督が語る育成指導論|第2回】日本の全カテゴリーで指導、日本人は「必要以上にミスを背負い込む」

 清水エスパルスを率いて2001年度の天皇杯を制したズドラブコ・ゼムノビッチ氏は今年、私立相生学院高校(兵庫県=通信制)サッカー部の監督に就任した。

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 もともと1995年に来日したゼムノビッチ氏は、千葉県市川市にあるS-P・フッチというチームを率いて、全国少年少女草カップに出場。250チーム近くが参加する大会で、街のクラブがJアカデミーに伍してベスト4に進出し、それを契機に清水エスパルスのジュニアユース(中学生)の総監督に就任している。その後は同ユース監督を経てトップチームの監督を務めており、すべてのカテゴリーの環境に身を置いてきた。

 そのうえで、概して日本人選手の通弊として「自信がなく、必要以上にミスを背負い込む」傾向があると感じている。その背景には全国高校サッカー選手権に象徴されるように、日本の育成年代ではリーグ戦以上に一発勝負のノックアウト方式が重視されている現実がある。

「確かに高校選手権は素晴らしい文化で守っていかなければならない。でも反面、厳しい予選を勝ち抜いても、本大会では半分以上のチームが1回試合をしただけで帰っていくことになる。リーグ戦と違って、失敗したら次がない。日本の選手たちは、一度ミスをしただけで、すぐに“やばい”と言い出すんです」

 例えば、早くから“ピクシー”の異名で知られたドラガン・ストイコビッチは真逆だった。

「ピクシーは16歳でプロの試合に出場し30歳代のベテランを押し退けてPKを蹴りました。ところが真ん中にループ気味のボールを蹴って失敗。でも次の試合でも、自分が蹴ると言って決めてきました。それを機に監督も『これから俺は、この選手を育てていくから、みんなも見守ってくれ』と宣言したんです」

 良いプレーを続けるから自信があるのか、自信があるから良いプレーができるのか。それは「鶏卵論議」になる。ただしゼムノビッチ氏は「欧州では相当に下手な選手でも自信満々だけど、日本の選手たちは本当に上手くても自信がない」と見ている。

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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