「絶対に止めてやる」 山梨学院を救った主将GK熊倉の自信に満ちたPKストップ

決勝の相手は青森山田「自分たちの力を信じてチャレンジャーとして臨みたい」

 案の定、後半14分にパスワークから守備を崩されて失点。同33分には先制点を挙げた石川がボックス内での反則からPKを献上し、帝京長岡のMF川上航立に連続ゴールを許した。指揮官が不安視していた足が止まりかけた時間帯の出来事だった。

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 石川は与えたPKを悔しがるとともに、「川上選手は縦パスを配球するので、自分がケアする役割でしたが、かなり通させてしまった。悔しさの残る試合です」と威勢のいい言葉は聞かれず、決勝進出にも破顔一笑というわけにはいかなかった。

 後半は10本のシュートを浴び、2失点以外にも大きなピンチを何度か招いたが、前半の守りは戦略通りに運んだそうで、指揮官も及第点を付ける。

 守備対策は、準々決勝で無失点に封じた優勝候補の昌平(埼玉)と比較して考案したという。「両チームともスタイルは似ているが、昌平がドリブルで侵入してくるのに対し、帝京長岡はDFの間に入ってくるターゲットにパスを出してくる。距離間をコンパクトにして守りを統制させました」と、長谷川監督は準々決勝に続いて明解な理論を披露した。

 チームとしても、山梨県勢としても11大会ぶり2度目の頂点まであと1勝だが、決勝の相手は難敵の青森山田だ。頼れるGK熊倉は「伝統のある強豪校だが、自分たちの力を信じてチャレンジャーとして臨みたい」と決意表明する。

 頼もしい人がもう1人いる。山梨の古豪、韮崎で羽中田昌らを育てて全国高校選手権に10度出場し、3度の準優勝。1975年のインターハイを制した横森巧総監督もベンチに鎮座する。88回大会で初優勝した往時の監督でもある78歳の名将は、その存在だけでチームの大きな支えになっていることだろう。

(河野 正 / Tadashi Kawano)



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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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