県25連覇ならず…衝撃敗戦後に議論「言わないのは違う」 兄はプロ、J1内定逸材の決意

青森山田の松田駿【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
青森山田の松田駿【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

青森山田の松田駿「ブローダーセン選手のようなパワーと技術を身につけていきたい」

 高校生たちにとって全国大会が終わったこれからが本当の夏を迎える。高体連はインターハイ、Jクラブユース選手権。覇権を手にしたチーム、志半ばで敗れたチーム、全国にたどり着けなかったチーム。それぞれの思いを抱えながら、全国各地のフェスティバルや合宿で夏以降の捲土重来を誓う選手たちの思いを描く“真夏の挑戦者”シリーズ。

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 第8回はインターハイ青森県予選決勝で八戸学院大野辺地西に1-1からのPK戦の末に敗れ、県25連覇を阻まれた青森山田の守護神・松田駿について。ショッキングな敗戦から2か月。ファジアーノ岡山入りが内定している松田が心に期するものとは。

「気持ちの部分では切り替わっていますが、やっぱりあの負けは絶対に忘れてはいけない。『あの負けで強くなれた』と思える夏にしないといけないと思っているので、この和倉ユースと青森ユース(サッカーフェスティバル、8月14日~16日に青森で開催)で立て直していかないといけないと思っています」

 和倉ユースサッカー大会、青森山田は決勝トーナメント初戦でヴィッセル神戸U-18に0-0からのPK戦の末に敗れた。だが、グループリーグの最初の2試合は3失点を喫したが、そこからは松田を中心に守備を安定させて決勝トーナメントでは神戸U-18、ガンバ大阪ユース(0-0からのPK負け)、順位決定戦の鹿児島実業戦(1-0)と全てクリーンシートで終えた。

「GKにとって失点は大きな責任。でも、キャプテンである以上、弱気になって言うべきことを言わないのは違う。自分の実力を磨きながらも、きちんと発言して、周りの意見を聞いて、ときには野辺地西戦の後のように選手ミーティングを開いて議論するなど、チームへの呼びかけは意識しています。

 正直、最初は『お前が言うな』と言われるかもしれないと思っていたのですが、周りの選手たちが大人でした。みんな人のせいにせずに、『自分がもっとやっていないからだ』とそれぞれが受け止めてくれたので、まだまだこのチームは成長する大きな力を持っていると感じています」

 和倉ユースに入る前の3週間、岡山の練習に参加。そこで正GKスベンド・ブローダーセンのプレーに釘付けになった。

「シュートストップは抜けていると言うか、1つレベルが違う。近距離のシュートでも、遠距離のシュートでも、いつ見ても変わらぬ安定感でずば抜けている。個人的に至近距離のシュートストップを課題としているので、そこは見習っていきたいし、もっとフィジカルを向上させて、ブローダーセン選手のようなパワーと技術を身につけていきたいと思いました」

 圧倒的な存在感を見せつけられた。だが、彼の心は怯むどころか、より闘争心とプロの世界へ飛び込む覚悟ができたという。

「高卒プロは夢でした。小さい頃からずっと目標にしてサッカーをやってきて、ポジションは違いますが、兄が高卒プロになる姿を見て憧れと『僕も』という気持ちが強くなりました。青森山田に入学をして、1年生の頃から『高卒プロになる』と周りにずっと宣言をしていて、そのために高校生活を捧げてきました。だからこそ、こうしてファジアーノさんからチャンンスをもらったときは『絶対に入る』という気持ちでやっていました」

 彼の兄はDF松田陸。前橋育英高時代は角田涼太朗、渡邊泰基(ともに横浜F・マリノス)らとともにDFラインを形成して選手権優勝を経験し、卒業後はG大阪に加入をした。そして今月にはジェフユナイテッド千葉から東京ヴェルディに完全移籍をしている。8歳年上の兄の試合に松田はよく連れて行ってもらっていた。

「僕が小学4年生の頃でめちゃくちゃ生意気だったのですが、兄の代の前橋育英の選手たちには内緒にボールを蹴ってくれたり、いろいろ話しかけてくれたり、本当にかわいがってもらいました。ファジアーノにはその代のキャプテンの田部井涼さんがいて、最初にキャンプに行ったときは『まさかお前が来るとは思っていなかったよ』と驚いてくれて、本当に良くしていただきました。そういう素晴らしい人間性を持った人たちを見て、よりプロになりたいと思いました」

 もちろん、高卒プロの厳しさは誰よりも理解している。兄はG大阪に3年間在籍したが、最初の2年はトップでの出番はなし。主戦場はU-23チームの一員としてのJ3リーグだった。プロ3年目でようやくJ1デビューを果たすが、2試合の出場にとどまって、プロ4年目に当時J2だったツエーゲン金沢に移籍。そこから定位置を掴んでいった経緯を、すぐ近くで目の当たりにしてきた。

「僕もファジアーノに行ったらU-21リーグ(2026-2027シーズンから創設される若手選手の育成のために設けられる21歳以下のプロリーグ)が主戦場になると思うのですが、兄がU-23での姿を目の当たりにしたので、僕も相当苦労すると思います。

 ガンバで出られなくて、そこから何回も移籍をして、出番を掴んでも、ジェフで出番をまた失って。心配することも多いですが、陸は昔からやるべきときは必ずやる男なので、さらに活躍すると思うし、僕も負けていられないし、どんなことがあっても落ち込んでいられないんです」

 プロ入りの決断にあたっては当然、兄にも相談をした。そのときも「プロに行けるなら絶対に行ったほうがいい」と強く背中を押された。

「決めたときもすぐに連絡が来て『おめでとう』と一緒になって喜んでくれた。だからこそ、僕は兄や周りの人たちに恩返しをしていかないといけないので、まずは青森山田のキャプテンとして、この夏の悔しさを必ずプレミア、冬の選手権で返すことに全力を尽くします」

 連覇の記録、県内連勝記録(418連勝)はストップしたが、青森山田は歩みを止めない。その先頭に立つ松田は意気高らかにその歩を前に進めている。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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