「絶対に止めてやる」 山梨学院を救った主将GK熊倉の自信に満ちたPKストップ

帝京長岡とのPK戦を制した山梨学院【写真提供:オフィシャルサポート】
帝京長岡とのPK戦を制した山梨学院【写真提供:オフィシャルサポート】

2-0から追いつかれるもPK戦で帝京長岡に勝利、11大会ぶりの決勝進出

 第99回全国高校サッカー選手権は9日、埼玉スタジアムで準決勝が行われ、第1試合で山梨学院(山梨)が帝京長岡(新潟)を2-2からのPK戦の末に下し、初出場初優勝を飾った第88回大会以来、11年ぶりのファイナルに駆け上がった。11日の決勝で前回準優勝の青森山田(青森)と対戦する。

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 2-0から同点とされてPK戦にもつれ込む――。こういう展開になると、追い付かれた側は心理的にも気後れするものだが、主将のGK熊倉匠の心境はこれとは対極だった。「試合中の自分は何もしていなかったのでPK戦は得意だし、絶対に止めてやろう、活躍するぞという思いで臨みました」と自信を持って立ち向かっていった。

 それでも90分の試合展開と同じく、嫌な流れになった。先攻の山梨学院が2人続けて沈めたのに対し、帝京長岡は1、2番手が失敗した。だが優位になりながら3人目と4人が立て続けに外してしまい、相手の3番手が成功。4人目に決められると追い付かれる重苦しい空気に包まれた。

 帝京長岡のキッカーを務めたMF鉾修平は試合中、強烈なシュートを3度も放っていたが、熊倉が左に跳んでストップ。5番手のMF谷口航大がGKの逆を突いて右隅に流し込み、山梨学院が藤枝明誠(静岡)との3回戦に続いてPK戦をものにした。

 2019年春に就任し、山梨学院では初の全国選手権で指揮を執る47歳の長谷川大監督は、「キーパーが落ち着いているので、PK戦には信頼して臨めました」と喜んだ。

 電光石火の先制点は、相手ボールのキックオフで開始されてから20秒過ぎに決まった。FW野田武瑠の長距離砲が右ポストに当たり、拾ったFW久保壮輝が強烈なシュート。ボランチのMF石川隼大が鋭い出足でGKが弾いたこぼれ球を蹴り込んだのだ。

 後半5分にはMF新井爽太が右からロングスローを放り込み、187センチの大型DF一瀬大寿がヘッドで追加点。1回戦から準々決勝までの4試合で1失点の堅牢とあり、圧倒的優位な立場となった。

 ところが戦略家の長谷川監督は先制点を奪った後、5回もあった決定機を外していた拙攻を案じていた。それが現実となり、いかにも分析家らしい解説をしてみせた。

「選手は(前半)3-0にできたな、という雰囲気でベンチに戻ってきた。2、3点取れる流れの中でシュートミスを繰り返して疲弊した。外すと疲れが倍増しフィジカルが低下するもの。後半にパスを回されるのは分かっていたので、(押し込まれた)残り15~20分のような戦いは避けたかった。(同点にされ)前半のツケが回ってきたと思いました」

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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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