“Jリーグ王者”川崎への敬意と今季3度目の挑戦 「闘えない」清水の姿はそこになかった

王者川崎フロンターレ相手に好パフォーマンスを見せた清水エスパルス【写真:小林 靖】
王者川崎フロンターレ相手に好パフォーマンスを見せた清水エスパルス【写真:小林 靖】

【J番記者コラム】川崎と今季3度目の対戦、怯むことなくハードワークを続ける

 清水エスパルスは5日のJ1リーグ第31節で、“王者”川崎フロンターレと今シーズン3度目の対戦に臨んだ。

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 1度目はシーズン開幕戦となった2月16日に行われたルヴァンカップのグループステージ初戦。新たにポゼッションサッカーを展開しようとして招聘したピーター・クラモフスキー新監督の初公式戦で、攻撃的なサッカーで挑んだが、チームの成熟度や個々の選手の質の差を見せつけられ1-5の大敗。2度目は8月29日のリーグ第13節、川崎に総シュート数33本を浴びせられ、手も足も出ずに0-5の惨敗を喫した。

 この2試合を振り返れば川崎にはほとんどミスがなく、そして攻守の切り替えも早く、前線からのプレッシャーを受けた清水の選手がミスをして失点を重ねる展開であった。まるで「蛇に睨まれた蛙」のごとく、両足に重りをつけて戦っていたようだった。

 あれから約3カ月。クラモフスキー監督から平岡宏章監督にバトンを渡された清水は、圧倒的な強さを示して前節にJリーグ史上最速で優勝を決めた川崎をホームに迎えた。平岡監督は「最高のチームと戦える。最高の準備をしてサポーターに笑顔で帰ってもらえるように頑張ろう」と選手に話し、公式戦で2015年に勝利してからここまでの5年間で10試合連続勝利がない川崎に対しては「逆にそういうことを聞くとウズウズする。正直、私自身は楽しみでしかない」と、選手を信頼してチャンピオンチームに一泡吹かせるつもりでいた。

 まず対策としてはMF金子翔太、MF西澤健太の両サイドハーフのポジションを入れ替えた。今や川崎の攻撃ポイントとなっているMF三笘薫は筑波大学当時、西澤の1年後輩となり、三笘のプレースタイルを十分に把握している西澤を対峙させることにした。また三笘にボールが渡り、スペースを空けると鋭いドリブルで守備が切り裂かれてしまうため、三笘にボールを入れさせないようにと正確なパスを供給するDF谷口彰悟に対して牽制に行き、DFジェジエウにボールを持たせる形としたが、前半11分という早い時間でその効果が結果に表れる。

 MF竹内涼のプレスからジェジエウのパスミスをMFヘナト・アウグストが拾い、FWカルリーニョス・ジュニオ、西澤と渡りクロス。中央へ入り込んだ竹内がフリックして落としたボールをカルリーニョスが押し込み、見事なショートカウンターから先制点が生まれた。前節に優勝が決まったが、控え選手を含めてほぼベストメンバーの川崎から奪った先制点には、これまでの川崎戦で見られていた「闘えないチーム」の姿はなかった。

 しかし、前半21分には川崎らしい攻撃の流れから同点とされてしまう。その後もボールを持たれる展開は続いたが、怯むことなくハードワークを続け、同40分には西澤のFKからペナルティーエリア内の混戦のこぼれ球をヘナトが押し込み、勝ち越して試合を折り返した。

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下舘浩久

しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。

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