“ゴールへの道”を見つける鎌田の秀逸なセンス 独トップクラスのアシスト技術で評価上昇
【ドイツ発コラム】独誌のアシスト数でブンデス首位タイ、ウニオン戦の2アシストに見えた充実ぶり
フランクフルトの日本代表MF鎌田大地は、ブンデスリーガ第9節終了時点でドイツのサッカー専門誌「キッカー」などの集計では6アシストとなり、バイエルン・ミュンヘンのポーランド代表FWロベルト・レバンドフスキと並び、アシストランキング首位タイに立っている。
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6アシストという数字以上に、今季の鎌田は数多くの得点機を演出している点が高く評価されている。パスは出し手がどこに出すかだけが大事なわけではない。そのパスの先に味方選手がいなければ、あるいは走り込まなければ、どれだけ決定機を生み出せそうな状況でもチャンスにはならないのだ。
その点で特に鎌田とポルトガル代表FWアンドレ・シルバのコンビは非常に合っていると思われる。短い距離での細かいパス交換はスムーズだし、ペナルティーエリアでポジショニングを取っているシルバがどの位置に、どのようなボールを求めているかを鎌田はしっかりとイメージできているようだ。出し手と受け手のイメージがシンクロできていたら、プレー判断のスピードと質はどんどん上がってくる。
点取り屋であるシルバは、どこでどのようにボールを受けたらシュートへ持っていけるかというのを、感覚として身につけている。昨シーズン移籍直後はブンデスリーガのプレースピードとリズムになかなか馴染めずにいたが、後半戦からは徐々に本領発揮。今季はここまで7得点と、とても調子がいい。
ゴールから逆算したところに立つシルバへのパスコースを見つけ出し、作り出すことができたら、あとはそこへ送るだけ――。そしてそのコースの作り方、見つけ方が鎌田は優れている。
ウニオン・ベルリン戦(3-3)の1アシスト目は、完全にゴールへの道が見えていた。右サイドでボールを持った鎌田は、相手DFが寄せ切ってくる前にゴール前にできているスペースを認知し、ファーサイド際へ走り込もうとしているシルバを見つけて、ゴールを斜めに横切るようなグラウンダーのクロスを鋭く送ったのだ。ウニオンGKアンドレアス・ルーテは飛び出してなんとか阻止しようとしたが届かず、シルバが丁寧にゴールを決めた。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。