三冠王手のバイエルン、「29戦無敗」に潜む落とし穴 CL準決勝で見えた問題点とは?

バイエルンは6度目の欧州制覇となるか【写真:AP】
バイエルンは6度目の欧州制覇となるか【写真:AP】

【ドイツ発コラム】破竹の公式戦20連勝、7年ぶりCL制覇に王手も…すべてが順風満帆ではない

 UEFAチャンピオンズリーグ(CL)準決勝でリヨンを3-0と撃破し、バイエルン・ミュンヘンは7年ぶりの決勝進出を決めた。ブンデスリーガとDFBポカールではすでに優勝を決めており、2012-13シーズン以来となる三冠達成まであと1勝に迫っている。クラブ記録となる公式戦連続無敗記録を「29」に更新し、さらに直近20連勝中だ。

 ただ、すべてが順風満帆というわけではない。準々決勝のバルセロナ戦(8-2)では大量得点のおかげもあり、守備におけるズレがそこまでフォーカスされなかったが、リヨン戦ではしっかりと相手に研究されていた。

 前半4分にチアゴ・アルカンタラが、ビルドアップの不用意なパスを奪われると、そこから1本の縦パスでリヨンのメンフィス・デパイに抜け出されて一気に大ピンチを迎えたシーンのほか、ゲーム序盤に立て続けに決定機を作られていたのはやはり気がかりだ。

 危機感は選手も指揮官も感じている。ハンス=ディーター・フリック監督は、「軽率なミスでボールを失うことが多かった。そうなると相手に流れをプレゼントすることになってしまう。速やかに改善しなければならないところだ。守備ライン裏のスペースをいつものように上手く守れていなかった。後半は良くなったが……」と反省点を口にしていた。

 またリヨン戦後のベンチにはトーマス・ミュラー、レオン・ゴレツカ、ヨシュア・キミッヒの3人が座り、ディスカッションを繰り返していた。自分たちの狙いがはまったバルセロナ戦とは違い、リヨン戦では相手に相当研究されていたところをどのように修正すべきか。

 特にサイドバックが釣り出され、その後方のスペースをあっさりと狙われてピンチを作られていたあたりは、確実に修正しなければならない。試合中にはカバーリングに奔走しなければならないセンターバックのジェローム・ボアテングとダビド・アラバは、それぞれキミッヒとアルフォンソ・デイヴィスのポジショニングミスを叱責していた。

 特にリヨン戦のデイヴィスは、不安定要素になっていた。爆発的なスピードと驚異的なフィジカル能力を武器に、今季ブレイクスルーを果たした逸材なのは間違いない。バルセロナ戦で見せたドリブル突破からのアシストは、世界最高峰左サイドバック(SB)へのポテンシャルを確かに感じさせた。ただし、まだまだフィジカルに頼りすぎなところがある。さすがにここまでの舞台ともなれば、「裏を取られても追いつけるから大丈夫」というわけにはいかない。ポジショニングがズレてしまうと裏を攻略され、足の速さで追いつく前に展開されてしまう、追いついたところで外される。相手がしてくるであろうプレーに対する備えができていないと、守り切ることは難しいのだ。

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中野吉之伴

1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

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