「恥ずかしい試合」から1年 清水のブラジル人MF、因縁の相手に汚名返上のミドル弾

清水MFヘナト・アウグスト【写真:Getty Images】
清水MFヘナト・アウグスト【写真:Getty Images】

【J番記者コラム】清水MFヘナト・アウグスト、1年前に0-8で敗れた札幌戦で決勝ミドル弾

 2019年8月17日、清水エスパルスがJ1リーグ第23節で北海道コンサドーレ札幌をホームに迎えた試合で、クラブ史上最大得失点差となる0-8という屈辱的な敗戦を喫してから約1年。札幌を率いるミハイロ・ペトロヴィッチ監督から当時、「0-1で8試合負けるよりも1試合0-8で負けるほうがまだ失うものは少ない」と励まされたが、その汚名返上の機会がやってきた。

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 IAIスタジアム日本平で8日に行われたJ1第9節、1年前の試合に出場していた選手で今節も先発したのは5人。まずはその中の1人であるMF金子翔太が口火を切った。

 前半は札幌のマンツーマンの守備に苦しめられチャンスを決めきれなかった清水だったが、左サイドバックに起用されてから安定した守備でチームにリズムを作っていたDFファン・ソッコがその攻撃の感覚も思い出し、前半アディショナルタイム2分に敵陣奥のスローインから相手DF2人の間をこじ開けて折り返すと、ペナルティーエリア中央の金子が左足で合わせたシュートが、ブロックに行った札幌MF菅大輝の左手に当たりPKを獲得。FWカルリーニョス・ジュニオも蹴りたそうな素振りも見せていたが、金子がボールをしっかりと抱えてPKスポットにボールを置いた。そこに知り合いでもないのに、まるで友だちのように札幌MF荒野拓馬が寄り添い、集中力をそぐために蹴る瞬間まで話しかけていたが、金子は笑顔で話を合わせ、逆にリラックスして思い切り右足を振り抜き、先制点を決めた。

 後半立ち上がりには、屈辱的な敗戦を喫した1年前の試合でも得点を許したFW鈴木武蔵にFKを直接決められて同点とされ、嫌なムードが漂ったが、後半開始から入った札幌DF田中駿汰が後半18分に2枚目のイエローカードで退場となり、流れは再び清水に傾いた。札幌も1人少ない状況で3バックから4バックに変えて対応したが、ここから清水の怒涛の攻撃が始まった。ただ、何度も決定的なチャンスを迎えるがシュートがゴールネットを揺らすことができずに、時間だけが過ぎていく。

 しかし、「今日の試合は自分にとって非常に大事な試合。昨年、札幌相手に0-8で負けたことはサッカー人生の中で一番悔しく、恥ずかしい試合だった」とあの日の屈辱を忘れていないMFヘナト・アウグストが、その状況を打開した。後半40分にMF中村慶太からペナルティーエリア手前でボールを受けると、迷うことなく豪快なミドルシュートを放つと、ここまで何度も好セーブで札幌ゴールを死守してきたGK菅野孝憲の手を弾き飛ばし、ニアサイドに突き刺した。

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下舘浩久

しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。

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