復活の大迫勇也、残留争いで示した真骨頂 大一番でゴール以上に光ったワンプレー

パーダーボルン戦でゴールを決めたブレーメンFW大迫勇也【写真:Getty Images】
パーダーボルン戦でゴールを決めたブレーメンFW大迫勇也【写真:Getty Images】

【ドイツ発コラム】こぼれ球に素早く反応、残留争いの大一番で974分ぶりのゴール

 日本代表FW大迫勇也が所属するブンデスリーガ17位のブレーメンは、現地時間13日に行われた第31節の18位パーダーボルンとの生き残りを懸けた直接対決に5-1で勝利し、残留に向けてビッグポイントとなる勝ち点3を獲得した。

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 フロリアン・コーフェルト監督は「チームはホッとしていることだろう。ブレーメンに着いてバスから降りるまではね。ただ、まだ勝利が必要なのだ。我々はまだ残留争いの真っ只中にいる」と、負けたら終わりの一戦を乗り切ったことで手にした自信の大きさを噛み締めながら、すぐに気持ちを次の試合へと向けていた。

 この試合で大迫勇也は、実に974分ぶりのゴールを決めている。得点自体は味方のシュートを相手GKがファンブルしたボールを押し込んだというもの。ラッキーゴールと片づけられるものかもしれない。だがFWにとって何より大事なのは、こうしたこぼれてくるかもしれないところにしっかりいるということだ。

 味方選手がシュートを打ったらゴール前に詰めろ――。

 FWをしたことがある選手なら、いや、サッカーをしたことがある人なら誰でも、指導者から聞き飽きるほど言われたことがあるだろう。

 ほとんどの場合は無駄走りで終わってしまう。練習を含めて何百回、何千回、それこそ何万回と狙い続ける。

「こんなのやっても報われないよ」

 そう思ってしまう選手だって、たくさんいるだろう。でも、ちょっとでもそうした思いが頭の中にあったら、足は動かなくなる。惰性で詰めようとしていたら、相手のミスであわやというシーンになりそうな時でも、相手DFの反応に負けてクリアされてしまう。いざチャンスが来た時に反応できるように、準備をしっかりとしておかなければならないのだ。

 大迫は味方がシュートに持ち込んだ瞬間、相手守備から離れて次の動きに備えていた。意識は次のプレーにしっかりと向かっていた。FWに求められる動きの一つに、ペナルティーエリア内に相手がケアしづらい空間と時間を見つけ出し、そこへ侵入できるタイミングを待つというのがある。常に自分がボールを迎えにいくのではない。ボールを“迎え入れる場所”に自分がいるのだ。

 チームが上手くいかないと、そうしたところまでボールが運ばれてこないことが増える。だからと、動いて関わろうとすればするほど、相手の視界の中でプレーすることになり、逆に潰されることが増えてしまう。そうなるとリズムを崩し、なんでもないプレーでミスをするようにもなってしまう。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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