はざまの世代を咲かせた手倉森流の人心掌握術 リオ行きのスパイスは揺るがぬ哲学と信念

貫いた信頼「悔しい思いをしたからこその伸び代」

「点を取らないで外されたときには、ダメで外されたと思われがち。そうではないと伝える。別のところで機能していたとも伝える。逆に点を取っても、植田(直通・鹿島)も北朝鮮でゴールを決めても外す。それは厳しいことを突きつけていることになる。点を取っているからいいということではない。もっともっと高まらなければいけないことはある。この世代、勝っていたらいいとなるとここで足止めになる。そうなってほしくないという思いです」

 準決勝イラク戦で劇的な決勝ゴールを挙げた原川力(川崎)も、絶対的なレギュラーというわけではない。チームの立ち上げから信頼を寄せてきた矢島慎也(岡山)も、このイラク戦ではベンチで90分間を終えた。キャプテンの遠藤航(浦和)こそ強行出場させたが、この大会で最終ラインで存在感を発揮していた岩波拓也(神戸)に出番はなかった。そうした選手たちに対しても、個別での対話を重ねた。「自分が結果に出すことだけに走らせない。誰が出てもこのチームのための仕事」という考えを徹底させてきた。ローテーションを貫く一方、グループからエゴを排除した。「戦い迷わせない。独りよがりにさせない」と語り、フォアザチームの精神を浸透させた。

「何人かは監督の部屋に呼びました。キャプテンや副キャプテンですね。力(原川)と矢島には食事会場で『お前ら燻し銀だ。(矢島)慎也とリキはこのチームのシステムを自由自在に変えられる能力がある。お前らがいるから俺は安心している』と伝えています。成長していますよ。リキは最後の京都で出れなかったが、キャンプで能力を発揮してくれた。慎也は岡山でゲームに出続けて、ゲームを操るまでになった感じです」

 

page1 page2 page3

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング