「お前、上手いな」 選手権8強で敗れた昌平、2年生“10番”が青森山田主将にかけられた言葉

青森山田に敗れた昌平イレブン(写真は開会式のものです)【写真:Football ZONE web】
青森山田に敗れた昌平イレブン(写真は開会式のものです)【写真:Football ZONE web】

反撃及ばず連覇を狙う“王者”に2-3で敗戦… MF須藤へ青森山田10番が健闘を称える

 第98回全国高校サッカー選手権は5日、準々決勝4試合が行われ、等々力陸上競技場での第1試合は連覇を狙う青森山田(青森)が昌平(埼玉)を3-2で下し、2年連続のベスト4に進んだ。昌平は埼玉県勢として第71回大会(1992年度)の武南以来、27年ぶりとなる準決勝進出を逃した。

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「お前、上手いな」

 Jリーグ浦和レッズへの加入が内定している青森山田のMF武田英寿主将は試合後、昌平の2年生ゲームキャプテンであるMF須藤直輝と握手しながら、こう言って健闘を称えた。この一言に激闘や、昌平の粘り強さといったものが詰め込まれていた。武田が須藤に投げかけた言葉は、昌平のチームとしての戦いぶりを礼賛したものに違いない。

 前半の0-3は予想外のスコアだった。前半10分、右クロスを青森山田のMF浦川流輝亜がシュート、昌平のGK牧之瀬皓太が止めたが、こぼれ球を浦川が拾って先制点。痛かったのは2点目と決勝点となる3点目だ。

 同19分、相手ボールをゴール左で昌平のDF柳澤直成がマイボールとし、味方に預けようとしたパスがミスキック。青森山田のMF後藤健太に渡ってしまい、難なく蹴り込まれた。そして迎えた前半アディショナルタイム。武田が左の浦川に配球し、そのままゴール前に駆け上がる。ワンバウンドのクロスをヘッドで押し込まれ、痛恨の3失点目を喫してしまったのだ。

 しかし、昌平の選手は知っていた。2018年の全国高校総体2回戦で0-2からひっくり返し、4-2で勝った激戦を思い出していた。須藤は「残り時間が3分になっても2点返せると信じて戦いました」と少しも怯むことなく、高円宮杯U-18プレミアリーグの決勝を制し、高校年代日本一に就いた王者と立ち合った。

「まだできるぞ、まだ終わらないぞ」

 就任13年目の藤島崇之監督は、ハーフタイムにこう鼓舞して選手をピッチに送り出した。後半9分、相手のパスミスからFW小見洋太が少し運ぶと、オフサイドライン手前へ絶妙のスルーパスを出した。反応した須藤がゴール左隅に決めて、まず1点を返した。

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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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