「負けてたまるかって」 長谷部誠、ドイツで久々に直面する“競争”と湧き上がる感情

フランクフルトMF長谷部誠【写真:Getty Images】
フランクフルトMF長谷部誠【写真:Getty Images】

フライブルク戦で理由が不透明なスタメン落ち 「監督もしっかり読み取っているなと…」

 0-1で敗れた10日のブンデスリーガ第11節フライブルク戦で、元日本代表MF長谷部誠は久しぶりの経験をした。怪我や違和感、休養というはっきりとした理由がないなかでスタメンから外れたのだ。

「監督と話しているわけではないんですけど。バイエルン戦に勝って、左サイドのエバン(・ヌディカ)いいですしね。競争という部分が自分の中に入ってきた感覚があります」

 長谷部は試合後、そのように振り返っていた。昨シーズンからずっとコンディションに問題がない限り、常にスタメンで起用され、いつもフル出場というのがフランクフルトにおける当たり前の光景だったはず。そのため、この日もローテーションの一環なのかという見方もあったが、本人は違った見解を示していた。

「ローテーションも、もちろんするはするんですけど、今日自分が出なかったのはどちらかというと自分のここ最近のパフォーマンスかなぁと。パフォーマンスというか、自分の中でもシーズン初めからずっと出てきて、体の重さとかも正直感じていて。それがプレーにも少なからず出ているのも感じている。それを監督も、しっかり読み取っているなという感覚もある」

 DFBポカール2回戦のザンクト・パウリ戦(10月30日/2-1)後には、連戦の疲れが溜まってきていることを口にしていた。それでも起用されれば、そのことを言い訳にしたりはしない。試合の流れを読み、自分たちでゲームをコントロールしていくために、長谷部のプレーインテリジェンスはチームにとって大事な土台だ。

 長谷部もそのことはよく分かっている。だが、精密機械のように正確だった長谷部のプレーが、微妙にズレていることが少しずつ見られるようになっていた。

「やっぱり判断のスピードとか、それはちょっと遅くなっているかなと。攻撃でボールを持っている時もそうだし、守備の時に一歩先を読むとか、そういうところでの感覚、身体が頭に反応して動くところとか。そういうところで感じる部分が、自分の中であった」

 本人もそう感じていたから、この日スタメンから外れたことにも「すっと受け入れている自分もいます」と、自然に受け止めることができたという。

 だからといって、このままでいいと思うつもりも全くない。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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