白熱の決勝も…ルヴァン杯はこのままでいいのか “若手の登竜門”になりきれない現状に疑問

今年のルヴァンカップは川崎フロンターレが優勝した【写真:Getty Images】
今年のルヴァンカップは川崎フロンターレが優勝した【写真:Getty Images】

存在価値に乏しい現状 「21歳以下」の先発起用ルールも国際常識から乖離

 カップ戦ファイナルの連敗を阻止したい川崎フロンターレと、初タイトルを目指す北海道コンサドーレ札幌によるルヴァンカップ決勝は、稀に見るスリリングな展開に沸いた。延長120分を戦い3-3、PK戦の末に川崎が初優勝した一戦は、札幌のミハイロ・ペトロビッチ監督の発言どおり「両チームにとって素晴らしいゲーム」だったことは間違いない。

 だがルヴァンカップが、Jリーグ、天皇杯と差別化され、明確な存在価値を維持できているかといえば疑問だ。

 確かに歴史を振り返れば、前身のナビスコカップはJリーグに先駆けて1992年に開幕し、ブーム到来の予兆を告げた。また清水エスパルス(1996年)、FC東京(2004、09年)、ジェフユナイテッド千葉(2005、06年)、大分トリニータ(2008年)などタイトル経験を持たない(千葉の前身・古河電工時代は除く)新鮮なチャンピオンを生み出し、それぞれのファンに大きな喜びを与えてきたのも事実だ。

 しかし反面、多くのチームがグループステージでターンオーバーを敷き、対戦カードが鮮度を欠く状況でファンの興味を引くのも難しい。一方でグループステージを勝ち上がるのに貢献した選手たちが、肝心な準決勝や決勝などの大舞台を踏めないのでは、「若手の登竜門」という大会趣旨から外れている。結局、申し訳程度に「21歳以下の選手を1名以上先発起用」を義務づけてはみたものの、今年の決勝でも川崎の田中碧や札幌の菅大輝は、規定がなくてもレギュラーに定着していた。

 そもそも「選手の輸出国」が運命づけられた近年の日本で、「21歳」をどう捉えるかの発想が明らかに国際常識から乖離している。1人だけの起用を義務づけて変化を促そうとするなら、せいぜい「18歳以下のホームグロウン選手」にするくらいの発想が要る。

 本来育成面の遅れが危惧されるようになったのは、18歳以下でプロ入りした選手たちの出場機会が確保できず、大学生に追い越されるという矛盾が目立ち始めたからだ。こうした状況を客観視して、高卒時点でプロの即戦力ではないと判断した選手が大学進学を選択するようになった。

 大学も千差万別だが、概ねプロと比較しての利点は、真剣勝負の場と戦術等を理解していく機会が確保されることだ。大学なら天皇杯などでプロに挑める機会があるが、プロで出場機会の少ない若手には格下との練習試合しかない。高校卒業時に大学進学組よりリードしていたはずの才能が萎んでしまうのは必然だった。

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近東京五輪からプラチナ世代まで約半世紀の歴史群像劇49編を収めた『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』(カンゼン)を上梓。『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(ともにカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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