久保建英、“大金星”に見えたマジョルカでの現在地 レアル番記者「トップ下のほうが…」

7年ぶりのレアル戦でチケットが完売した、マジョルカ本拠地ソン・モイシュ【写真:高橋智行】
7年ぶりのレアル戦でチケットが完売した、マジョルカ本拠地ソン・モイシュ【写真:高橋智行】

時間の経過とともに久保の持ち味は完全に消された

 ここまで5勝3分でリーグ首位に立つレアルは、代表ウィークでクロアチア代表MFルカ・モドリッチ、ウェールズ代表FWギャレス・ベイル、ドイツ代表MFトニ・クロースなどを怪我で欠き、ベルギー代表MFエデン・アザールは4人目の子供の誕生により招集外。さらに3日後には、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のガラタサライとのアウェー戦という重要な一戦を控えていたため、ジネディーヌ・ジダン監督はスペイン代表DFダニエル・カルバハルとフランス代表DFラファエル・ヴァランを温存し、完全に戦力を落としての“Bチーム”で臨んだのである。レアルはこの時点でCL開幕から1分1敗。グループステージ突破に向けて、ガラタサライ戦は落とせないという決意の表れと言えた(結果的に1-0で勝利した)。

 マジョルカ戦は現地時間21時にキックオフ。開始7分、マジョルカの攻撃の大きな武器であるMFラゴ・ジュニオールが左サイドでボールを受け、カットインからゴール右下隅に“ゴラッソ”を叩き込む。ホームのマジョルカが先制するという衝撃的な展開で試合がスタートした。

 さらにレアル守備陣のミスからFWアンテ・ブディミルが追加点を奪うも、オフサイドで取り消しとなる。その後、レアルの反撃を受け、元フランス代表FWカリム・ベンゼマにクロスバーを叩かれる危ないシーンを作られたものの、それ以外ではマジョルカ守備陣に綻びはなく、前半を1点リードで折り返した。

 前半の試合展開を考慮すると、後半は守備的な戦いが必要となるため、久保の使いどころが難しいと思われたものの、後半開始直後から久保はウォーミングアップを開始。後半14分に1人目の交代選手としてピッチに入り、いつもどおり右サイドハーフでプレーした。

 しかしこの日も久保は、前節エスパニョール戦と同様、1点リードの状態での投入となったため、攻撃よりも守備に奔走する時間が圧倒的に多くなる。右サイドではボールが出ないため、時折左サイドに流れてプレーし、何かをしようという意欲は見せるもチャンスを作りきれない。そして時間の経過とともにチーム自体が完全に守勢に回ったことから、久保の持ち味は完全に消された。

 それでも堅固な守備ブロックを形成する一員となり、ラゴ・ジュニオールが前半に決めた虎の子の1点をチームメートとともに守り抜き、ここまで無敗のリーガ首位チームから大金星を挙げたのである。しかし久保個人にとっては、またもや満足いくプレー内容ではなかっただろう。

 マジョルカが本拠地ソン・モイシュで行われた1部リーグのレアル戦に勝利するのは、05-06シーズン(2-1)以来14シーズンぶりのこと。その間に7度対戦するも、2分5敗と一度も勝てていなかったのである。

高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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