長谷部とフランクフルトが追った“二兎の夢” ドイツ人の心を震わせた中堅クラブの情熱
独紙の「今季ベストチーム」アンケートで、読者の44%がフランクフルトに投票
ドイツ紙「ビルト」の読者アンケート(52万246人が参加)で、今季のベストチームに選ばれたのは優勝したバイエルンでも2位のドルトムントでもなかった。ドイツのサッカーファンの心を射止めたのは、ヨーロッパの舞台でヒリヒリする戦いを続けたフランクフルトだ。実に全体の44%の票を集めた(バイエルンは22%、ドルトムントは17%)。
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これまでUEFAヨーロッパリーグ(EL)は、どちらかといえば評価と解釈が難しいリーグだった。欧州ナンバーワンを決めるUEFAチャンピオンズリーグ(CL)は、必然的にボルテージもモチベーションも最高潮に上がる。それと比べると、ELはフォーマットも規模も魅力も中途半端という見られ方が一般的で、「CLの二番煎じ」というイメージがどうしても強い。もちろんベスト8、ベスト4までいけば、それこそCL常連組の強豪クラブも名を連ね、華やかにもなる。ただ、そうしたクラブがどこまで本気でELのタイトルを狙ってきているのかとなると、「あわよくば」の感じがなくはない。
今回の例で言えば、決勝に残ったアーセナルとチェルシーにしても、EL優勝での来季CL出場権獲得よりも、プレミアリーグで4位以内に入るというところに優先順位を置いていたはず。事実、チェルシーのマウリツィオ・サッリ監督はフランクフルトとの準決勝第1戦の後に、「まずはプレミアリーグからCL出場を狙う。ただEL優勝でという道もある」と答えていた(結果的にプレミア3位で来季CL出場権を獲得)。
一方で、ヨーロッパのカップ戦にコンスタントに出場できないような中堅クラブは、この大会に高い意欲で臨んでくるが、どうしても戦力的に過密日程を戦い抜けるだけの選手層がないため、ELかリーグ戦のどちらかでしか結果を残せない。だから結局、どのクラブも自分たちの中で優先順位をつけて、消化していこうとする。
2017-18シーズンのブンデスリーガ勢であれば、ホッフェンハイムとヘルタ・ベルリンはELグループステージで最下位。あっさりとELに別れを告げた分、ホッフェンハイムは後半戦に調子を取り戻して3位でのフィニッシュに成功。ヘルタも10位と中位で終えることができた。一方のケルンはELグループステージで3位と粘りを見せたが、そのつけがブンデスリーガに回ってしまい、最下位で2部降格となってしまった。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。