なでしこJは「技術に優れ、クレバー」 独代表の声で再確認した“武器”とW杯への課題

先制点を決めたMF長谷川(中央)は、相手GKのミスを見逃さなかった【写真:Getty Images】
先制点を決めたMF長谷川(中央)は、相手GKのミスを見逃さなかった【写真:Getty Images】

なでしこJは「十分なほどゴール前ではクレバーで、技術的にも優れている」

 フォス=テクレンブルク監督は日本の組織だったプレスに苦しんだことを素直に認めたうえで、「テストゲームでは選手の適性を見定める必要もある。若い選手を起用していた。誰がこの状況で正しい判断ができるのか、可能性を持った選手は誰なのかを見極めようとした」と、前半の意図について語っていた。ベンチ前からの声かけが、ほぼ「シンプルに、シンプルに!」という言葉だった理由は、誰がどのように状況を判断し、対応するかを観察したかったからだろう。

「今はチームを作り上げるプロセスにいる段階であり、そのなかでの試合。満足のいく試合ではなかったけど、それもプロセス。大事なのはリアクションで、それを後半見せてくれたのが良かった。今日は多くの選手が、過密日程で疲れを抱えていたのも(苦戦した)要因だった」

 チーム作りにおいて常に好プレーで、好試合で、好結果を挙げることができれば言うことはない。だが成長のためには、課題が表面化することが大事でもある。そうした時期にいることを、フォス=テクレンブルク監督は分かっているし、日本も同じ時期にいることを理解している。だから一つひとつのプレーに神経質になりすぎることもない。

 試合はドイツGKアルムート・シュルトの思いもよらぬ凡ミスで、日本が先制点を挙げることになった。前半35分、ペナルティーエリアを少し出たところでボールを持ったシュルトは、すぐ近くにいる味方にパスを出そうとしたが足を引っかけてしまい、ボールをMF長谷川唯へプレゼントしてしまった。「技術的などうしようもないミス」とシュルトは、試合後に自身のミスに腹を立てながらも、「日本代表は、そのミスを得点につなげるには十分なほどゴール前ではクレバーで、技術的にも優れている」と、そのミスを見逃さずに2得点を挙げた日本を称えていた。

 なるほど、ゴール前におけるクレバーさ、技術の高さがあるというのは素晴らしい。では、なでしこジャパンはどのように相手のゴール前へボールを運ぶべきなのだろうか。

中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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