日本にゾーンディフェンスは浸透しない? “教科書”のようなスウェーデンとの比較論

スウェーデン代表のゾーンディフェンスは、混乱がない【写真:Getty Images】
スウェーデン代表のゾーンディフェンスは、混乱がない【写真:Getty Images】

マニュアル化され、混乱がないスウェーデンのゾーンディフェンス

 日本にはゾーンディフェンスが浸透していないという話を時々聞く。確かにそうだと思うところと、そうでもないんじゃないかというところがある。

 浸透していないと思うのは、ゾーンを押さえるポジショニングだ。教科書のようなゾーンディフェンスを敷くスウェーデン代表と比べると分かりやすいだろう。まず、スウェーデンの守り方を図にしてみたので見ていただきたい(図1参照)。

[図1]スウェーデン代表のゾーンディフェンス【図:著者提供】
[図1]スウェーデン代表のゾーンディフェンス【図:著者提供】

 相手チームのMFがボールを保持していて、そのゾーンの守備を担当しているクラエセンが対応している。この時クラエセンは「1」~「3」のスペースのうち、どこを守ろうとするか。クラエセンの立ち位置を見れば分かると思うが、このケースで消そうとしているのは「2」のスペースだ。逆に捨てているのは「1」のスペース。「3」のスペースはできれば消したいが、そこまでボールホルダーとの距離を詰められないなら「2」のスペースを消すことが優先される。

 この後のスウェーデンの守備における対応は、もし「1」のスペース(攻撃側のSB)にパスが出されたら、クラエセンがボールを追ってSBへの守備をする。もし消しているにもかかわらず「2」のスペースへパスが出て相手SBに拾われた時は、右SBのルスティグが対応してクラエセンはMFのラインに入る。「3」のスペースへ出たら、クラエセンはプレスバックして相手FWを挟み込む。

 このように対応の仕方、動き方、ポジションの埋め方がマニュアル化されていて、まず混乱がないのがスウェーデンの特徴だった。DFとMFの「4-4」の守備ブロックでペナルティーエリアの幅を守り、サイドに相手がいてもマークしない。このケースでは相手SBはずっとフリーなのだ。どこを優先的に守るかが明確で、逆に言えば捨てるところも決まっている。確かにこういう“どっしり”と構えた守備をするチームは、日本にはほとんどない。というのも、スウェーデンとは守備の前提が違うからだ。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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