日本にゾーンディフェンスは浸透しない? “教科書”のようなスウェーデンとの比較論

“日本式”ゾーンディフェンスの方法論はいまだ確立されず

 ゾーンディフェンスは、イングランドからスウェーデンに伝わっている。マルメFFをチャンピオンズカップ(現UEFAチャンピオンズリーグ)決勝にまで導いたボブ・ホートン監督、ハルムスタッドを率いたロイ・ホジソン監督の二人が伝道師だった。それ以前はリベロを置いたマンツーマンが主流だったが、ゾーンシステムが導入されてからは本家のイングランド以上にシステマティックな守備がお家芸になった。

 ちなみに、日本に本格的なゾーンシステムをサンフレッチェ広島に伝えたスチュワート・バクスター監督は、来日前にハルムスタッドを指揮している。

 スウェーデンにゾーンが浸透したのは、彼らの体格や国民性に合っていたからだと思う。ゾーンディフェンスの理論構成が大柄な選手向きなのだ。つまり、日本がゾーンシステムで効果を得るにはスウェーデン並の大男を揃えるか、そうでなければ“和式”にアレンジするしかないのだと思う。その「いかにアレンジするか」の部分で、まだ決定版が出ていないのではないだろうか。

 教科書どおりのゾーンシステムが日本に浸透していないのは無理もないが、アレンジも確立されていないのが現状と思われる。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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