カナダW杯から4歳若返ったなでしこ 東アジア杯で新戦力台頭あるか

平均年齢23・65歳 初招集柴田、村松に加え、楢本、小原らに期待

 東アジアカップに臨むなでしこジャパンのメンバー23人が21日に発表された。初招集こそ4人だが、2桁以上のキャップ数のあるメンバーはわずかに5人。最年長がMF上尾野辺めぐみ(新潟)の29歳で、GK山下杏也加(日テレ)とMF増矢理花(INAC)の2人はまだ19歳。平均年齢は23・65歳となった。今回6人が選出された女子ワールドカップカナダ大会から約4歳若返った。
 来年8月のリオデジャネイロ五輪で金メダル獲得に向け、ここまで先送りになっていた世代交代に動いた格好となった佐々木則夫監督。その「チャレンジなでしこ」という命名にふさわしいフレッシュなメンバー構成になった。
 7月5日(日本時間6日)のW杯決勝から、わずかに18日。佐々木監督が「W杯で出場機会の少ない選手、リーグでパフォーマンスを評価した選手」と明かした選考基準の中で、エースのFW大儀見優季(ヴォルフスブルク)などの海外組や、キャプテンマークを巻いてきたMF宮間あや(岡山湯郷)などベテランは外れた。
 GKは187センチの長身が武器の山根恵里奈(千葉)に加え、武中麗依(仙台)と山下の2人が初招集された。武中は2012年のU-20女子W杯3位のメンバーであり、山下はリーグ12試合で5失点と鉄壁の守備を誇る日テレの守護神。佐々木監督も「2人とも若いGKではあるがチームで存在感があり、今伸びていると評価している」と期待を懸けている。足下でボールを扱う技術にも優れる現代型のGKであり、指揮官も「2人のベテランGKいるが、超えるようなパフォーマンスに期待している」と語った。今回は選出が見送られた海堀あゆみ(INAC)と福元美穂(岡山湯郷)の2人が長らく競争してきたポジションに新たな戦力を加える算段だ。
 DFラインで軸になりそうなのは、北原佳奈(新潟)だろう。フル代表での出場数はまだ8試合だが、フィールドプレーヤーでは唯一170センチを超える体格を持ち、W杯カナダ大会でもプレーした。初招集の村松智子(日テレ)について、佐々木監督は「非常に安定感がある。サイドバックとしてもセンターバックとしても期待している」と、守備力を生かしたサイドバックへのコンバートも示唆した。小原由梨愛(新潟)や高良亮子(仙台)といった攻撃力のあるサイドバックとどのような使い分けを図るかにも注目が集まる。
 大きく若返った印象が強いのが、中盤のメンバーだ。高さがありW杯メンバーでもある川村優理(仙台)がボランチでは軸になりそうだが、12年に世界3位のヤングなでしこの中心で“澤の後継者”と期待されてきた猶本光(浦和)もメンバーに入った。浦和では激しいレギュラー争いの中で、一時期サイドでのプレーに迷いを見せていたが、中央のポジションを確保してからは持ち味を発揮している。昨季浦和のリーグ優勝に大きく貢献した。DF登録となったカナダ組の田中明日菜(INAC)や、これまであまり日が当たらなかった実力派の上辻佑実(日テレ)もポジション争いに絡みそうだ。
 攻撃的な選手では、柴田華絵(浦和)が初選出された。12年のU-20女子W杯で大ブレイクし、大会最優秀選手ランキングで2位となりシルバーボールを受賞した。佐々木監督も「いつもレッズの中で右サイドで非常に小気味良いプレーをしている。そんなにスピードはないが、ターンや切り返し、チェンジ・オブ・ペースでかわすドリブルなど、日本の小柄な特徴を生かして安定感のあるプレーをしている。是非一度試してみたいという思いがある」と大きな期待をしている。
 同世代の京川舞(INAC)、横山久美(AC長野)や一世代下の増矢といった若い力に加え、今大会で「10番」を背負う上尾野辺にも注目したい。代表では宮間の存在に隠れがちだが、左足から放たれるセットプレーのキックは一級品だ。
 前線では、W杯メンバーの菅澤優衣香(千葉)に加え、右膝の負傷でW杯を断念した高瀬愛実が復帰した。再開したリーグ戦でもゴールを量産する2人が軸になるが、気になるのは高瀬のコンディションだ。再開後のゲームでは45分間のプレーに限定されているだけに、リーグ2試合連続ゴール中の田中美南(日テレ)も得点力でアピールしたい。
 佐々木監督は「この中から最低でも3分の1はリオ五輪に関わって欲しい」と語った。ベースとなるカナダ女子W杯の準優勝メンバーに今回の東アジア組から6選手を加えていく構想を明らかにしている。
 W杯決勝アメリカ戦での悔し涙から1ヵ月にも満たない中で始まる今大会は、新星なでしこメンバーの船出となる。すでに実績のある選手たちへ向けた挑戦権を手にするためには優勝が最低条件となることを、佐々木監督は示唆していた。
 そして、今回温存された実力者へのチャレンジ権を奪い合う過酷なオーディションの場となる。

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

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