原口元気は「笑わない」 夢のW杯で闘う男の美学「サッカーがつらいのは当たり前」

今季期限付き移籍したデュッセルドルフでは1部昇格に貢献した【写真:Getty Images】
今季期限付き移籍したデュッセルドルフでは1部昇格に貢献した【写真:Getty Images】

「今の自分は守備でパワーを使い過ぎて…」

「攻撃的な役割を担いながら、守備も手を抜かない。それはドイツでプレーするには当然こなさなきゃならない必須条件でもある。だから、自分は特別に他の選手と違うことをしているとは感じていない。チームの勝利を望むなら当然しなきゃいけないプレーだから。むしろ今の自分は守備でパワーを使い過ぎて攻撃面で決定的な仕事を果たせていないように思っていて、力の無さを痛感している。でも、ここが自分の限界だとは思っていない。守備を頑張りながら、攻撃でもチームに影響力を及ぼしたい。今はそう思っている」

 普段の言動や態度から、原口は常に自己の向上を目指しているように思われがちだが、実情は異なる。確かに彼はプレースキルを高めるために誰よりも精進するが、それ以上に、いかに自らがチームに貢献を果たせるかを第一義に考えている。

 今季途中にドイツ・ブンデスリーガのヘルタ・ベルリンから期限付き移籍したフォルトゥナ・デュッセルドルフが1部昇格を決めた翌日に、チームメイトらが休養を取るなかで、彼だけは個人トレーナーとフィジカルトレーニングを行って身体のケアに努めていた。その理由は自己鍛錬が名目ではなく、目前に迫っていたロシアでの戦いを見据えてのものだった。

「ここで身体を鈍らせるわけにはいかないから。今日という日は必ず明日につながっていると思うから」

 以前、原口に自らがサッカーをプレーする理由を問うたことがある。質問の意図をはかりかねた彼は「理由?」と言って首を傾げたが、これまでの自らのサッカー人生を思い返して、こう言葉を発した。

「もちろん、サッカーが楽しいと思うからプレーしているけど、サッカーの世界では楽しさと厳しさが共存しているとも思う。その厳しさの中に身を置きたい自分がいて、その中で何かを勝ち取っていく楽しさを味わいたい」

島崎英純

1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。

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