Jリーグで顕在化する“ハリル効果” 川崎の支配力を揺るがす激しさと直線的な攻撃

ベンゲルやザッケローニも指摘してきた日本の“弱点”

 またその3日後の第13節では、FC東京も同様の戦い方を試みた。ポゼッションで勝る川崎は、両SBを高い位置に上げるが、逆にFC東京は川崎最後尾の両CBの間、あるいはサイドのスペースへロングボールを送り、ディエゴ・オリヴェイラと永井謙佑を走らせた。

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「前半から(味方が)謙佑でなければ追いつかない無理なボールを放り込んでも、文句も言わずに走り続けた。ボクの中ではMVPです」(長谷川監督)

 結局川崎は、いずれも0-2で連敗。連覇に黄信号が灯った。川崎の鬼木達監督は、浦和戦を、こう振り返っている。

「相手に揺さぶられ、ウチは互いの距離間が広がってしまった」

 もちろん、それだけで堅守速攻が優位と見るのは早計だ。昨年の覇者川崎を筆頭に、ここまでAFCチャンピオンズリーグ出場組には大きなハンデがあった。疲労を見極めてメンバーを入れ替えるから、どうしても連携の精度をラージグループに浸透させるのは難しかった。またレフェリーの笛の傾向の変化も、挑発的にボールを回す川崎の状況を難しくしている。だが、それでも別格のポゼッションを誇る川崎に対しても、激しいデュエルと縦への直線的な攻撃が有効なことを確認できた意味合いは小さくない。

 今までも多くの外国人指導者が、ハリルホジッチ前監督と同様の指摘を繰り返してきた。

 かつて名古屋グランパスを率いたアーセン・ベンゲルは「パスは未来へ(前へ)出すものだ」と力説したし、元日本代表監督のアルベルト・ザッケローニも「インテンシティー(プレーの強度)と縦への意識の不足」を訴えた。誰もが少なからず気づいていたことだが、ようやくJのピッチでも弱点矯正の波が顕在化してきた。

 一方でワールドカップ中断明けは、難易度の高いチャレンジを選択して出遅れ気味の川崎、柏レイソル、横浜F・マリノス、名古屋などが、どう巻き返していくかが焦点になりそうである。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)



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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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