ドイツ新時代の象徴「ラップトップ監督」 世界的名将でも意外と高い“無名選手率”

“二頭体制”は抜擢への移行期にありがち

 ただ、そもそも選手としての能力と監督としての能力は、全く別と言っていい。たまたま両方を持っている人もいるけれども、むしろ例外かもしれない。有名選手でも監督として成功しないケースは多く、逆に有名監督における“無名選手率”は意外と高い。

 もちろん、素晴らしい選手が監督として上手くいかないと限ったわけではなく、単に選手と監督は違う仕事だというだけである。選手時代の実績は、監督としての能力にはあまり関係がない。

 イングランドやドイツでは、トップレベルの選手経験がない監督は信用されていなかった。2006年ドイツW杯のドイツ代表監督は名選手だったユルゲン・クリスマンだったが、戦術面で実質的な監督だったのはヨアヒム・レーブだった。レーブは現在のドイツ代表監督だが、いきなりレーブを監督に据えるのではなく、クリンスマンを表に立てた。似たような例はイングランドにもあり、一種のメディア対策とも言える。“二頭体制”は、無名選手の監督抜擢への移行期にありがちな手法だ。

 ドイツでは有名選手への優遇をやめて、無名選手にもトップリーグの監督への道を開放すると、「ラップトップ監督」たちが台頭した。日本はようやく、現役時代にJリーグやW杯でプレーした経験のある指導者が出てきたところだが、より優秀な監督を輩出するためには選手としての実績ではなく、監督としての能力を評価できるシステムを作らなくてはならない。

【了】

西部謙司●文 text by Kenji Nishibe

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

 

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