J2で記録した驚異の「53973」 昇格目指すも…タイムリミットに本音「怖いんですけど」

柏のリカルド・ロドリゲス監督に抱く共感
2026年J2・J3百年構想リーグは昇降格のないシーズンだったが、8月8日のテゲバジャーロ宮崎戦からスタートした26-27シーズンは結果が求められる本番。横浜FCを率いる須藤大輔監督にとっても“真価が問われる1年”になるのは間違いない。
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その一発目を敵地で1-0の白星を手にし、迎えた16日のホーム開幕・ジュビロ磐田戦。この一戦は横浜FCとして初めてのMUFGスタジアム(国立競技場)開催で、5万3973人もの観客を動員した。2日前に同じく国立で行われたJ1の東京ヴェルディ対柏レイソル戦が4万4690人だったのを見れば、J2でこの数字がどれだけ凄まじいかよく分かる。
クラブとしても勝負を賭けた大一番で、横浜FCは魅力的な攻撃サッカーを体現。前半28分に髙江麗央が直接FK弾を決めると、後半開始早々に新加入・島村拓弥の突破から得たPKをエースFWルキアンが決め、2点をリードした。さらに島村がダメ押しとなる3点目をゲット。その後、キャプテン・岩武克弥が2枚目のイエローカードを受けて退場したが、10人で何とかしのいでJ1昇格のライバルを3-1で撃破した。超満員の大観衆に好印象を与えたのは確かだろう。
ビッグマッチ翌週末の22日に行われたモンテディオ山形戦を惜しくも0-2で落とし、開幕3連勝こそ逃したものの、今のところ上位グループにはしっかりとつけている。
「移籍ウインドーが9月16日まで開いているんで、誰か引き抜かれるのが正直、怖いんですけど」と須藤監督は苦笑するが、ここまでのチーム作りはある程度、うまく行っている様子だ。
さらに、須藤監督は今のメンバーに全幅の信頼を置いている。
「この半年間で山田康太を前で使うべきか、ボランチで使うべきかから始まって、最適解探しを続けました。結局、今はボランチが一番いいという判断で使っていますが、その前に新加入の島村(拓哉)と横山(暁之)をシャドーに並べる形も機能しています。
島村は柏レイソル時代、右ウイングバック(WB)がメインで、あまり使われていなかった。その後、アルビレックス新潟に行ってから横浜FCに来ましたけど、シャドーで使おうと思ったのは、自分でターンしてシュートまで持っていける選手だから。それは横山も同じで、いいアクセントになっていますね。
WBには槍のようなタイプを置きたいという考えがあり、今は右に村田(透馬)、左に新保海鈴を使っています。ただ、海鈴には『ワイドで張っているときもあっていいし、バランスを考えながらインサイドに入ってきてもいい』と話をしましたけど、積極的にトライしてくれている。僕が見始めてからの半年間ですごく伸びている選手の1人ですね」
この3-4-2-1の連動性や機能性を見ていると、今季J1で開幕3連勝を飾っている柏レイソルに通じる部分が少なくない。実は須藤監督もリカルド・ロドリゲス監督の戦術や哲学に強い共感を抱いており、その戦い方を興味深くチェックし、自分のチーム作りにも生かしているというのだ。
「リカルド監督が2025年に柏を率いるようになり、いきなりJ1優勝争いをするのを見ていて、当時藤枝MYFCにいた僕は『自分が藤枝でやりたいことをやって勝っているな』と心からワクワクしました」
共感を認めつつ、自身とリカルド・ロドリゲス監督の“違い”についてはこう分析する。
「横浜FCに来てからもよく見ていますけど、リカルド監督と僕とではシャドーの考え方が少し違うのかなと感じます。リカルド監督はシャドーに小泉(佳穂)や山内(日向汰)、渡井(理己)といったボールを持てる選手を置いていますよね。綺麗なつなぎを目指している分、手数がかかると思うんです。そこからドリブル突破してゴールに向かっていくという動きも少ない。僕はドリブルで行ける選手を置いてダイレクトにゴールを目指したいので、そのあたりが少し異なります」
それでも「WBは縦に行ける選手がいい」という考え方は同じ。特に須藤監督が藤枝で指導した久保藤次郎がイキイキと躍動感を持ってプレーする姿には、大きな刺激を受けている様子だ。
「藤枝時代の彼は自信なくして泣いていましたからね(苦笑)。そういう姿を目の当たりにして、僕は右足のクロスや縦突破にまずはトライしてもらい、それができたら次はインサイドに切れ込んで左足のシュートという課題を与え、それをクリアしたらマイナスのクロスとか1つ1つやるべきことを潰していきました。
階段を上がるにつれて本人もストロングに引っ張られてウイークが消えていったし、自信を持ってピッチに立てるようになった。昨年頭に柏に行ってからは日本代表入りして、昨年のE-1選手権にも出ましたよね。僕もメッチャ嬉しくて、ずっと大会を見ていましたけど、選手はいつ大化けするか分からないんです。
大きく伸びる選手というのは、監督やコーチが言うことが間違っていようが、『まずやってみよう』とトライする。それで失敗しても、自分に合うものだけ取り入れて、取捨選択しながらプラスにしていけるんです。『監督はああ言っているけど、別にいいか』とやらない選手はそのまま停滞するか、下降線を辿っていく。本当にそう思います。
今、横浜FCで関わっている選手にも光る素材はいますから、僕は彼らを大きく伸ばしたい。『横浜FCは選手を伸ばせて勝てるチーム』と言われるように仕向けていきたいです」
須藤監督は語気を強める。第2・3の久保藤次郎を生み出すべく、熱血指揮官は懸命に1人1人の人間と向き合っていく覚悟だ。(第5回に続く)
(元川悦子 / Etsuko Motokawa)

元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。























