日本代表MF「試合後に話を」 人件費ブンデス9位でも…欧州カップ頂点を目指せる理由

フライブルクの鈴木唯人【写真:ロイター】
フライブルクの鈴木唯人【写真:ロイター】

フライブルク鈴木唯人「信頼されているからこそ、チームのためにハードワークを」

 日本代表MF鈴木唯人がプレーするフライブルクが素晴らしい成熟さを見せ、ドイツのみならず、欧州でも注目を集めている。ドイツカップこそ準決勝でシュツットガルトに敗れたが、ブンデスリーガではカンファレンスリーグ出場圏内の7位に位置している。第32節のヴォルフスブルク戦では、肩を痛めて途中交代。5月7日にはポルトガル1部ブラガとのヨーロッパリーグ準決勝の第2戦があるため、チーム牽引してきた24歳の状態が心配される。

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 ブンデスリーガで人件費9位のフライブルク(約1億9000万ユーロ)が、このシーズン終盤まで様々なルートでチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグ、カンファレンスリーグ全ての出場権獲得のチャンスがあるのは、シンプルに称賛に値することだ。

 試合の内容もいい。EL準々決勝のセルタ戦では2戦合計6-1で快勝。攻撃面で問題を抱え、なかなかフィニッシュまで持ち込めない時期もあったが、ここ最近はチャンスの質と量がぐっと増え、得点数も順調にアップ。鈴木はそうしたチームの変化について問われると、その背景についてこう答えてくれた。

「怖がらずボールを受けよう、つなごうって、みんながボールを要求するようになっている。相手がどう出てくるのかっていうのもわかったうえで3人目をうまく使いながら、空いているスペースをみんなわかりながら、プレーできている」

 前からプレスにくる相手に対して前線に蹴りだしてセカンドボールを回収、というのは、ひとつのチーム戦術のだし、昨季までのフライブルクはそこをうまく活用して、起点を作ることもできていた。ただ、そればかりになると相手の対応もしやすくなる。蹴りだすけどセカンドボールを拾えず押し込まれる、という展開が増えてしまったのでは、そこから先に進めない。

 そうした課題はどのチームでも抱えたりするだろうが、そうしたときにその解決策が明確に示されていること。そして、それをチームとして共通理解のもとに積み重ねられること。そこにフライブルクの強さがある。

 役割分担がクリアになり、チームとしてビルドアップから狙いを持ったパスを前線に送るようになったことで、鈴木の動きにも変化が生まれる。常にボールをもらおうと動き回るのではなく、味方が送ってくれることを信じて、相手が侵入されたくないエリアで待てるシーンが増えているのだ。

「ある程度うまく自由に動いて、落ちるときは落ちています。(チームメイトからの)信頼もそれなりに勝ち取れていると思います。それよりもみんながストレスなくプレーできていることが、うまくつながっている要因だと思います。僕がボールを受けることがすべてではない。いいシーンが最近は多く見られているので、いいほうに向かっているんじゃないかなと思います」

 フライブルクがみせる強みの一つが、チーム作りのうまさ。生え抜き選手が多く、長年このクラブでプレーする選手が各ポジションにいて、そこに新加入選手が見事なハーモニーを醸し出している。鈴木だけではなく、イゴール・マタノビッチ、昨季途中加入のニクラス・ベステら新戦力も含めて、フライブルクの戦い方を深いところで理解し、チームタスクを着実にこなしながら、それぞれの良さを出している。

 その秘密の一つに、フライブルクには選手個々をサポートしてくれる特別コーチがいる点があげられる。鈴木が話してくれたことがある。

「個別ミーティングがけっこうありますね。僕のプレーを監督と個別コーチと3人で映像を見ながらよくミーティングをして、『もっとここはこうしないといけないよ』とか、アドバイスをもらっています。すごいありがたいことですし、それで僕自身も何をこうやらないといけないのかっていうのが明確になっています」

 このチームでプレーするためにはハードワークは必須。チームタスクをサボらないことは絶対条件だ。鈴木にしても、他の選手にしても、「うまくいっているから自分のプレーだけやっていい」なんてことはないのだ。

「信頼を得たから、何かを免除されるわけではない。信頼されているからこそ、チームのためにハードワークをしたり、守備をしたり、そういったところでチームメートも信頼してくれると思います。そういうのを見失わずに、やるべきことをやってきたないなと思いますね」

 経験を力に変えることも重要だろう。チームとしての成長に小さくはない影響をもたらしたのが、バイエルンとのリーグ戦だった。ホームで後半36分まで2-0でリードしていたのに、終盤の猛攻に耐え切れずに2-3で逆転負け。負けたショックは小さくはないが、この試合でチームが持ち帰ったもののほうが大きかった、と鈴木は振り返る。

「もちろん、僕たちもすごくチームとしてやれている感覚はありました。ただ、試合後にみんなで、『あと1%でも何かを自分に投資して、チームのためにできることを1人1人がもう少しやっていこう!』という話をしました。そういうメンタル的な部分が、きょうの試合にもつながっていたと思いますし、みんな頑張っていたと思います」

 リーグは残り2試合。EL準決勝の第1戦ではポルトガルのブラガにアウェーで1-2で敗れたが、ホームで戦う第2戦を残している。シーズンはまだ終わっていない。来季欧州カップ戦出場権をつかむチャンスはある一方で、すべてを逃す可能性だってある。ただそれに不安がりながらプレーする選手は今のフライブルクにはいないだろう。その中心で活躍する鈴木のプレーから、今季最後まで目が離せない。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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