逸材19歳は「久保建英、鎌田大地の後継者」 残留争いから軌道修正…FC東京が強い理由

優秀な素材をスカウティングし易い利点、そのポテンシャルをどれだけ引き出せるか
FC東京が首位争いに浮上してきた。もちろん好調の最大の要因は思い切った戦力補強で、背景には昨年まったく見せ場を作れず11位に終わった深刻な危機意識があったはずだ。だが反面せっかく戦力を整えても、結果に直結しないチームは世界に溢れている。肝心なのは、松橋力蔵監督が適材適所で豊富な戦力を活用していることだ。
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序盤から出遅れた昨年は、残留するためにベテランの経験値を消費した感が強く、未来への展望は乏しかった。しかしFC東京で2年目を迎えた松橋監督は、どう見ても無理があった室屋成と長友佑都の両SBを開幕から得意なサイドに戻し、それだけでも機能性は大幅に改善された。また多摩川クラシコでは新加入選手が5人スタメンに名を連ね、4人がベンチ入りをしていた。ところが新しいメンバーが過半数を占めながら、むしろ連動性は高まりグラウンダーのパスをつなげながらアイデアを活かして何度かのチャンスを築き勝利につなげた。
適性ポジションという点では、昨年は左WBでブレイクした佐藤龍之介のトップ下(FW)起用が当たった。FC東京は、ボランチの1枚がCBの間まで下がってビルドアップを始めることが多いが、その際に佐藤龍がボランチの位置まで降りてボールを引き出し、適宜攻撃を進め、さらにフィニッシュにも絡んでいる。開幕時点では4-4-2の左MFの控えで、確かにこのポジションでは局面で唸らせるプレーはあっても、日本代表としてワールドカップで戦うような姿をイメージするのは難しかった。
だが川崎フロンターレ戦では夏に近いほど気温が急上昇し、中2日の強行軍だったのに、指揮官は最後まで佐藤龍をピッチに残した。ただしゲームを見れば、もはや代えの効かない選手になっていることが良く判る。佐藤龍も期待に応えて両チーム最多の1万2619メートルも走り回り、プレーの質も量と同等以上だった。
例えば2点目のシーンでは、ボランチの位置まで降りると前線の中央にいた佐藤恵允を見つけて長い縦パスを刺し込み、それが仲川輝人の仕掛けから野澤零温のゴールにつながった。また後半31分には、川崎が神出鬼没の佐藤龍をバイタルエリア中央でフリーにすると、シュートも狙える状態だったが、野澤に完璧なスルーパスを通して決定機を創出した。しかもチャンスを演出するだけに止まらず、ロングカウンターからマルセロ・ヒアンが左サイドを打破したシーンでは、ただ一人猛スプリントで走り込みスライディングで合わせている。
敗れた川崎の長谷部茂利監督は「刺すようなパスやゴールに迫るプレーがなかった」と反省したが、まさにそれを体現していたのが佐藤龍だった。思えばFC東京では、18歳直前の久保建英が同じような役割をこなし、局面ごとに緩急を判断してゲームをコントロールしていた。また鎌田大地もボランチの立場で類似した役割をこなしているが、いつか佐藤龍が後継者に指名される日が来るのかもしれない。
多摩川クラシコでは最終ライン4人のうち3人が新加入で、特に左側の2枚をレフティーの稲村隼翔、橋本健人を配したことで、特色を生かした連携がスムーズに行われている。さらにスタメンにはアカデミー出身者が5人、ベンチにも3人が控えていた。これまでFC東京はアカデミーから多数の優秀な選手を輩出してきたが、別の場所で開花することが少なくなかった。もちろんそれはそれで有意義なのだが、本来ならアカデミー出身者は、まず同じクラブのトップチームで成果を残し、収入源に変わっていくのが理想だ。
優秀な素材をスカウティングし易い利点を持つクラブなので、そのポテンシャルをどれだけ引き出せるかは、未来の明暗を分ける。そういう意味でも、松橋体制2年目の軌道修正は、重要な分水嶺になるかもしれない。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)

加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。





















