トップ昇格ならず→1年で古巣内定…18歳が“異例の帰還” 実を結んだ「戻りたい想い」

新潟医療福祉大学の立川遼翔【写真:安藤隆人】
新潟医療福祉大学の立川遼翔【写真:安藤隆人】

新潟医療福祉大学の立川遼翔「本当にここに来て良かったと思っています」

 京都サンガF.C.は4月2日、新潟医療福祉大学のFW立川遼翔が2028-29シーズンから加入することを発表した。加入シーズンが示すように、立川はまだ2年生になったばかり。京都U-18からトップ昇格ができず、新潟医療福祉大にやってきた立川が、なぜ1年足らずで古巣へのプロとしての帰還を果たすことができたのか。

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 立川の特徴は183センチのサイズと繊細なボールタッチを駆使したキープ力、突破力、そして剥がしてからのシュートのうまさにある。FWだがトップ下としてゲームメーカーもできる存在として、京都U-18ではプリンスリーグ関西1部で得点王に輝いた。

 だが、課題は守備の強度と一発で裏に抜け出してゴールを仕留めるという推進力で、これがネックとなってトップ昇格を果たすことができなかった。

「もちろんずっとトップ昇格を目標にしてきましたし、大学とかは一切考えていなかったので、昇格できないと言われたときは悔しかったです。でも、そこは自覚はしていました。1対1での守備の部分だったり、ボールを奪いきる部分だったり、しっかりと戻りきるという部分が足りていなかったので、大学はその課題を解消できて、かつ自分の持ち味が出せる場所を選ぼうと思いました」

 関西の強豪校の話もあるなかで選択肢の一番手に浮上したのが新潟医療福祉大だった。

「もともと(新潟医療福祉大の)酒井良コーチがサンガのアカデミーコーチをやっていた縁もあって、高3になる春のイギョラカップで声をかけてもらったんです。最初は正直、全く知らなかったのですが、いざ大学進学となったときにすごく興味が湧いて、実際に練習参加をしたら環境がものすごく整っていてサッカーに集中できるし、サッカー面では強度もスピード感もあって、『ここなら自分の課題を鍛えられるし、持ち味で違いを作り出せる』と思ったので決めました」

 ただサイズがあってうまいだけではなく、前への推進力と守備力を兼ね揃えた柔剛兼用のアタッカーになって4年後に京都に戻る。そう覚悟を決めて新潟へ旅立った立川は、昨年の1年間で飛躍的な成長を見せた。

 1年時から出番を掴むと、インカレではトップ下として全試合にスタメン出場。予選ラウンドで大阪体育大にPK負けし、決勝ラウンドに進出できなかったが、強化ラウンドでは5試合すべて戦い抜いて優勝に貢献した。そして今年はリーグで5ゴール1アシストと好調をキープ。一気に頭角を表してきた。

「まだ1年しか経っていませんが、本当にここに来て良かったと思っています。医福で学んだのは『1試合に懸ける想い』です。どうしても僕らは全国大会しかプロのスカウトに見てもらえる機会はないのですが、その分、全員が全国大会に対する想いがすさまじいし、全国でピッチに立つために、日頃の練習に臨む意識や集中力が本当に高いんです。特に紅白戦は本当にバチバチで、強度がものすごく高い。ハングリー精神を強く持った仲間たちとサッカーができることで、本当に自分も鍛えられました」

 新潟医療福祉大は現在、北信越大学サッカーリーグ1部で破竹の9連覇中。北信越のなかでは突き抜けた存在ゆえにリーグ戦では均衡した試合が少ないのも事実。その状況でも熾烈なチーム内競争と全国大会に懸ける強い思いをチームとして持っているからこそ、日常のなかで個が磨かれてベースが上がり、いざ全国でも総理大臣杯準優勝1回(2024年度)、インカレ準優勝2回(2022年度、2024年度)と結果を残している。

「全国に向かっていくパワーは他のチームでは感じられないものがある」と口にしたように、立川はその日常のなかで揉まれ、たった1年で自らのベースを一気に引き上げた。

 そして、インカレ終了後にあるJ2クラブから練習参加の声がかかり、練習参加の話を進めていたが、その間に京都から練習参加のオファーが届いた。「やっぱり戻りたい想いが強かった」と、京都のキャンプに参加。4-3-3のインサイドハーフや前線でプレーし、前への推進力に加え、間でボールを受けて展開をしたり、縦パスを刺したり、持ち味を発揮。曹貴裁監督から「人と違う動きができる」と評価をもらうと、梅崎司コーチからも「かなりいいものを持っているから、もっと怖い選手にならないといけないよ」とアドバイスをもらった。

 キャンプ終了後に正式オファーが届くと、「自分が小さい頃から育ててきてもらったクラブで、恩返ししたいという気持ちで決めました」と早期決断をした。ただ、大学はしっかりと卒業する方向で、プロと大学生を残りの3年間は両立していく。

「プロでも大学でも学ぶことはたくさんあるので、この時間を大事にして、より逞しい選手に成長し続けていきたいと思います」

 自分の選択が最高の選択だったと実感しているからこそ、まだまだやるべきことはある。よりスケールの大きなアタッカーとして、立川は2つの大切な場所でさらなる飛躍を誓っている。

(安藤隆人 / Takahito Ando)



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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。

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