町田戦の「主審リスト除外騒動」 中東メディア誤報も…妥当だった「ゴール取り消し」

マー・ニン主審が、大会から追放されたと一部の中東メディアが報じた
サッカーの試合が開催される限り、監督の采配や選手のプレーとともに、審判に対する話題が途切れることはない。
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大詰めを迎えているチャンピオンズリーグの準決勝、4月28日に行われたパリ・サンジェルマン対バイエルンの一戦では、前半終了間際にアルフォンソ・デイビスの体とともに手にボールが当たった。主審はPKを宣告し、これを決めたPSGが一歩リードする形となった。
翌日、アトレチコ・マドリー対アーセナルの試合でも同じような事象が起きた。後半、シュートをブロックしたベン・ホワイトの体に当たったボールが手の方向に飛び、これがPKと判断されている。
ハンドの反則は、サッカー競技規則の第12条に規定されている。「競技者の手や腕にボールが触れることのすべてが、反則になるわけではない」と明記されており、反則と見なされるのは「手や腕をボールの方向に動かし、意図的に触れる」、あるいは「手や腕で体を不自然に大きくして触れる」場合などだ。
日本サッカー協会も、手に当たったからといってすべてがハンドではないことを周知するため、さまざまな事象を取り上げた動画を制作し、その基準の普及に努めている。
IFAB(国際サッカー評議会)の定義に照らせば、意図的な接触や不自然な体の拡大が焦点となる。しかし、前述した2つのシーンは、いずれも自身の体に当たって跳ね返ったボールが、極めて短い時間で手に接触している。
手がボールの方向に動くほどの時間はなく、また手の位置も自然であり、体から大きく離れていたわけではない。これをハンドとして罰するのは、競技の本質から外れている可能性が高いのではないか。
昨今はVARの導入により、事象を極めて微細に確認できるようになった。その結果、審判の意識が「当たったか、当たっていないか」という物理的な事実の確認に偏りすぎている懸念がある。
審判には「法の支配」に固執するのではなく、「法の精神」に則った判断が求められる。避けることのできなかった2つの事象に対し、安易にPKを与えるべきではなかったと考えるのが妥当だろう。
だからといって、判定に疑義がある審判を「大会から追放せよ」と糾弾するのは筋が違う。選手がシュートミスをしたからといって、次の試合から即座に戦力外通告を受けることがないのと同様である。
審判に関する騒動は、AFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)準々決勝でも発生した。アル・イテハド対町田の試合で笛を吹いたマー・ニン主審が、大会から追放されたと一部メディアが報じたのだ。偶然手に当たったボールが同点ゴールにつながったように見えた場面で、主審はこれを取り消している。
本来、「手に当たれば即ハンド」ではないが、直後に得点が生まれた場合はルール上、別個の扱いとなる。このためゴールの取り消しは妥当な判断であったといえる。だが、敗れた地元クラブやメディアは感情的な納得が得られなかったようだ。
サウジアラビアのメディアなどは、マー・ニン主審が審判リストから除外され、すでに開催地を離れたと報じ、中東メディア全体を巻き込む騒動となった。
実際にはマー・ニン氏はACLE決勝戦に第四の審判として起用されていた。AFC(アジアサッカー連盟)は、過熱する地元メディアの批判に配慮して主審からは外したものの、審判員としての評価自体は下げなかったのではないか。感情的なバッシングから審判を守り、キャリアを継続させるという組織のスタンスが、このアサインメントから透けて見える。
話題になった審判ばかりを取り上げたが、試合の主役が選手である以上、審判は目立たないに越したことはない。その意味で、4月29日のJ1第10節、東京ヴェルディ対鹿島アントラーズを裁いた大橋侑祐主審の振る舞いには特筆すべきものがあった。
前半41分、三竿健斗のタックルが染野唯月の足を挟み込み、大橋主審は即座にイエローカードを提示した。直後にVARが退場の可能性を示唆して介入。オンフィールドレビューが行われたが、大橋主審は自身の判定を変えなかった。
判定が確定した際、三竿は大橋主審に握手を求めて手を伸ばした。しかし大橋主審はそれに応じることなく、毅然とした態度で試合を進行させた。もしもあそこで審判が握手していれば中立性が疑われるし、また主審が目立つ場面になっていたはずだ。
大橋主審は2025年にプロフェッショナル・レフェリーとなり、国際審判員にも登録されている。これからさらなるキャリアを築いていく過程で、テクノロジーが示す断片的な事実にとらわれるだけでなく、堂々とした態度と、深いサッカー観に基づいたレフェリングを継続して見せてほしいと願う。
(森雅史 / Masafumi Mori)

森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。





















