百年構想リーグで「価値をどう見出すのか」 ベテランに試練…若手主体で試される真価

百年構想リーグでのベテランの活躍に注目【写真:徳原隆元】
百年構想リーグでのベテランの活躍に注目【写真:徳原隆元】

長友、香川、柴崎、清武…百年構想リーグにキャリア賭ける30代ベテランたち

 2月6日から幕を開ける明治安田Jリーグ百年構想リーグ。J1は東西10チームずつのリーグ戦、J2・J3は40チームを10チームずつ4グループに分けてのリーグ戦ということで、非常に興味深いものがある。昇降格がなく、勝敗をPK戦で完全決着させるというレギュレーションを含め、その動向が注目されるところだ。

【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!

 こうしたなか、気になるのが、30代ベテラン選手の動向である。J1クラブはAFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)出場権がかかってくるため、どのチームも基本的に「優勝を狙う」という大目標を掲げている。が、「2026-27シーズン本番に向けての基盤固め」をより重視するところも多い。J2・J3クラブになれば、その傾向はより強まるはず。となれば、「若手を積極的にトライする場にしたい」と考える指揮官は少なくないだろう。

「百年構想リーグは若手を使いながらのチーム育成が主体になると思うし、自分のようなベテラン選手の価値をどう見出すのかというのは1つ課題。僕自身は半年間でも違いを見せながらうまくやれればいいと考えています」と大分トリニータ2年目の清武弘嗣も少し前に話していたが、同じような危機感を抱く年長者もいるのではないか。

 実際、清武の場合、怪我からの復帰途上で、開幕からフル稼働というわけにはいかない。今季就任したばかりの四方田修平監督は「時間を作るとか、選択肢がたくさんあるとか、そういう部分については別格」とリスペクトを口にしたが、「コンディションを上げることが最優先」という見方も示していた。時間限定のなかで、清武がチームを勝たせる切り札になれれば理想的だが、果たしてどういう使われ方になるのか。新指揮官のレジェンドの扱いを注視していく必要があるだろう。

 2026年北中米ワールドカップ(W杯)で5度目の大舞台参戦を狙う長友佑都(FC東京)、Jリーグ復帰4年目でタイトル獲得に燃えている香川真司(C大阪)、チームは昨季J1王者に輝きながら自身の出番が激減した柴崎岳(鹿島)らも、清武と似たような難しさに直面すると言えそうだ。

 まず長友だが、松橋力蔵監督体制1年目だった昨季は27試合(うち先発17試合)に出場。指揮官から一定の信頼を得て、両サイドバック(SB)でコンスタントに起用された。このため、今季も流れを維持できそうな雰囲気はある。だが、今季のFC東京はドイツから復帰して2年目の室屋成がキャプテンに就任。これまで以上の活躍を期しているはずだし、日本代表経験者のあるバングーナガンデ佳史扶、松橋監督のアルビレックス新潟時代の秘蔵っ子である新戦力・橋本健人もSB争いに参戦してくる。半年契約の長友に定位置が約束されているわけではないのだ。

「本当にFC東京でタイトルをここで取ってW杯に向かうことしか見えていないので、僕には長い契約は必要ないですし、この半年、本当に勝負して、自分の価値をみなさんに示していきます」

 先月の始動日に目をギラつかせていた長友は、沖縄キャンプなどを経て、着実にコンディションを引き上げている模様だ。7日の開幕・鹿島アントラーズ戦出場も期待されるが、最初からハイレベルのパフォーマンスを見せ続けることがW杯行きの絶対条件。万が一、出番を失うようだと、悲願達成が難しくなるだろう。この百年構想リーグは長友のキャリアを賭けた大勝負になるはずだ。

 セレッソ大阪の香川も必ずしも安泰とは言えない立ち位置にいるのではないか。就任2年目のアーサー・パパス監督は若手抜擢に強い意欲を示しており、ボランチもアカデミー生え抜きの喜田陽、いわきFCから復帰した石渡ネルソン、SC相模原から戻ってきた大迫塁らの積極起用を考えている様子。キャプテン・田中駿汰がプレシーズンに負傷したこともあり、7日のガンバ大阪との開幕・大阪ダービーは香川が使われる可能性が大だろうが、その後は不透明な部分も少なくない。

「セレッソには百年構想リーグで優勝するチャンスがあると思う。僕たちは勝ち続けることが大事だし、クラブとして一体感を持つことが重要になる。ベテランには勝つためにチームを引っ張っていく責任がある。そこは自覚してます」

 1月の宮崎キャンプで語気を強めた香川。偉大な背番号8が力強くチームをリードし、C大阪が勝ち続ければ、パパス監督も重用するだろうが、結果が出なければベンチに座る時間が長くならないとも限らない。そんな負の連鎖を回避すべく、「百年構想リーグはもちろん、2026-27シーズンも香川真司が必要だ」という価値を実証するしかない。

 もう1人、柴崎はベンチ入りを勝ち取るところからのスタートになりそうだ。鬼木達監督体制1年目だった昨季は2月の開幕・湘南ベルマーレ戦から3試合目まで連続で先発。その後も5月頭までは断続的にスタメンで出ていたが、7月以降はほとんど試合に出られなくなった。三竿健斗と知念慶が調子を上げ、舩橋佑も大きな飛躍を遂げているうちに、序列がどんどん下がっていき、ベンチ外という扱いも増えてしまったのだ。

「鹿島にJ1タイトルを取らせる」と決意を固め、2023年夏に古巣復帰を果たしてから2年半。クラブは悲願の優勝を達成したが、柴崎自身にとっては想定外の事態に陥った印象だ。本人も複雑な感情を抱いたに違いない。それでも鹿島を離れることなく、契約延長を選んだのだから、この半年間に賭ける思いはすさまじいものがあるはず。今季もキャプテン・背番号10をつけて新シーズンに挑む以上、確固たる存在価値を示さなければいけない。7日のFC東京戦で柴崎がピッチに立つことはあるのか。そこは大いに注目すべき点だろう。

 上記4人以外にも、この百年構想リーグにキャリアを賭けるベテランはさまざまなクラブにいる。そういう面々にフォーカスしながらこの特別大会をチェックしていくのも一興。若い世代の躍進も楽しみだが、年長者の意地もぜひ見たいものである。

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)



page 1/1

元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング