17歳が痛感「個の能力が全然僕らと違う」 J1に圧倒されるも…主将は断言「通用する」

千葉の姫野誠【写真:アフロスポーツ】
千葉の姫野誠【写真:アフロスポーツ】

千葉の姫野誠「自分はボールを持って違いを生み出せる選手だと言い聞かせながら」

 オリジナル10のジェフユナイテッド千葉を17年ぶりのJ1へと導いた立役者の一人、高校生JリーガーのMF姫野誠がまもなく開幕する「明治安田Jリーグ百年構想リーグ」を待ち焦がれている。RB大宮アルディージャに敗北寸前まで追いつめられた昨年12月のJ1昇格プレーオフ準決勝。プロデビューからわずか23分後に奇跡の同点ゴールを決めた17歳のホープは、昇降格のない半年間の特別大会へ、どのような思いを抱いているのか。(取材・文=藤江直人)

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 17歳の高校生Jリーガー、千葉の姫野が呪文のように唱えている目標がある。

「自分はボールを持って違いを生み出せる選手だと言い聞かせながら、いつも練習しています」

 千葉U-18に所属したまま2種登録され、トップチームの練習に参加し始めたのが昨年8月。当時から抱いてきた自分自身へのビジョンは、同10月のプロ契約締結、今年1月の契約更新をへてさらに鮮明になった。

 一方で素朴な疑問も募る。自らのプレーを介して生み出していく、他の選手との「違い」とはいったい何なのか。開幕が迫る特別大会に向けて、姫野は具体的な数字を添えながら説明する。

「ゴールの数で言えば5ゴールを取りたい。自分がどれだけ通用するのかを確かめたいのと、自分の将来を考えたときに、やはりJ1という舞台で活躍する必要があるなかで、自分の一番の長所でもある仕掛けるところ、というのをもっともっと出して、チームを勝たせるための存在感というものを出していきたい」

 今シーズンの千葉には、身長171センチ、体重66キロの姫野が放つ脅威を目の当たりにした選手がいる。

 J1へ昇格する最後の1枠を4チームが争った昨シーズンのJ1昇格プレーオフ。初戦だった昨年12月7日の準決勝で千葉に敗れた大宮から、このオフに完全移籍で加入した津久井匠海が苦笑する。

「あの試合では確かマコ(姫野)が初出場だったのでまったく情報がなくて。そのときは僕が左サイドでマコが途中から右サイドに来て、何だか小さくてかわいらしい高校生が入ってきたなと思ったんですけど、いつの間にかああいう素晴らしいゴールを決められてしまって。僕たちからしたら本当に悪夢みたいな感じだったんですね」

 出場ゼロのまま昨シーズンのJ2リーグ戦を終えていた姫野は、3点のビハインドを背負った後半15分から途中出場。直後の26分、32分の連続ゴールで追い上げた千葉は、38分には姫野が同点ゴールを一閃。勢いに乗って奇跡の逆転勝利をもぎ取った千葉は、徳島ヴォルティスとの決勝も制して悲願を成就させた。

 左右両足を遜色なく駆使できる姫野は、利き足を問われると「両足」と即答する。プロデビュー戦で決めた起死回生の一撃も左足による技ありのループ弾。チームメイトになった姫野を、津久井があらためて称賛する。

「左右両足で蹴れて、なおかつ本当に攻撃のクオリティーがとても高い選手なので日々、学びになっています。ジェフ千葉のファン・サポーターのみなさんにとっては、ヒーローのような素晴らしい存在だと思います」

 1月31日には今回で30回目を迎えた柏レイソルとの伝統のプレシーズンマッチ、ちばぎんカップが行われた。敵地・三協フロンテア柏スタジアムに乗り込んだ千葉は、前半のスコアこそ0-1ながら、シュート数で0対15、コーナーキック(CK)でも0対13と昨シーズンのJ1リーグで2位だった柏に攻守両面で圧倒され続けた。

「自分は出ていなかったのであまり言えないですけど、難しいゲームになる、というのは覚悟していました」

 ベンチスタートだった前半をこう振り返った姫野は、後半開始とともに天笠泰輝に代わって左サイドハーフとして途中出場。初めてJ1チームと対峙した45分間へ、流れを変えてやろう、という決意とともに臨んだ。

「途中から出る選手は絶対にそう思っていないとダメなので。それは表現できたかな、と思います」

 言葉通りに左サイドからチャンスを演出。後半20分のクロスは惜しくも味方に合わなかったものの、その流れで得た右CKから石川大地が同点ゴールを決めた。最終的に1-2で敗れた試合後、姫野はこう語っている。

「やはり一人ひとりの個の能力というのが全然僕らと違いました。あれだけ個の能力が高かったら、昨シーズンのJ1で2位になると感じました。相手がボールを持つ時間が多く、苦しい時間が続くなかでチームのために活躍するには、やはり監督が求めるタフさが必要になってくる。今後の練習で激しくやっていきたい」

 課題をあげながら努めて前を向くホープへ、キャプテンの鈴木大輔も思わず目を細めている。

「あらためてですけど、この(J1の)舞台で通用する選手だと証明してくれたと思っています」

 姫野が千葉市で産声をあげたのが2008年。千葉は翌2009シーズンにJ2へ降格し、小学生年代から地元・千葉のアカデミーで育ってきた姫野がプロ契約を結んだ2025シーズンに悲願のJ1昇格を決めた。

 伝説として語り継がれる大宮戦のゴールを含めて、J1復帰の象徴となったホープの素顔は千葉県立検見川高校の2年生。Jリーガーと高校生の二刀流で挑む今後へ、久保建英をはじめとする多くの先達たちのように、通信制の高校へ転校する選択肢をもちあわせているのか。姫野は“いま”にすべてを注いでいくと明言した。

「まだわからないですけど、自分にできることを全力で、できる限り頑張っていきたい」

 7日には浦和レッズをホームのフクダ電子アリーナに迎える「百年構想リーグ」の地域ラウンドEASTの開幕戦が待っている。昇降格のない半年間の戦いへ。柏戦を糧にしながら、姫野はすでに決意を新たにしている。

「スピード感や走行距離などフィジカル的なところの強度と質がまだまだ足りないと痛感しました。それをこの半年間でもう一段階あげていきたい。個人としても初めてのJ1なので、思い切ってやっていきます」

 現在進行形で成長を続ける過程に、百年構想リーグで個人的な目標として掲げた「5ゴール」も刻まれている。千葉U-18時代から変わらぬ「37番」を背負いながら、姫野は全力で走り続けていく。

(藤江直人 / Fujie Naoto)



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藤江直人

ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

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