日本人に億超え給料「払ってでも獲ろう」 欧州育成リーグに広がる風潮…今冬は18億円売却成功

小川航基が語ったオランダリーグの現状
多くの日本人選手が活躍する、今季のオランダリーグ。リーグの順位順に彼らの名前を挙げると、フェイエノールト(2位)DF渡辺剛、FW上田綺世、NECナイメヘン(3位)MF佐野航大、FW小川航基、FW塩貝健人(→ヴォルフスブルクへ移籍)、アヤックス(4位)DF板倉滉、DF冨安健洋、スパルタ(5位)FW三戸舜介、AZ(6位)DF毎熊晟矢と延べ9人もいる。塩貝を除く8人がA代表経験者だ。またヤンマーがオーナーに就いた2部リーグのアルメレ・シティには、セレッソ大阪からの半年レンタルという形でDF高橋仁胡が所属している。
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専門誌「フットボール・インターナショナル」によると、EU外選手の最低年俸は60万8000ユーロ(約1億1000万円)に設定されている(21歳未満の選手は30万4000ユーロ=約5600万円)。未曾有の円安とは言え、1億円を越す給与だ。
1月24日のズウォレ戦で今季7得点目を決めた小川は試合後、囲み取材に応じ、日本人記者からの「EU外選手は高額なサラリーが必用なのに、それでもなぜオランダのクラブは日本人選手を取りたがるのか?」という問いに答えた。
「『日本人選手はヨーロッパで通用する』と歴代の先人たちが見せました。ここオランダでも『最低年俸を払ってでも獲ろう』という風潮があると思います。言葉は悪いですが、『日本人はお金になるぞ。安く買って、高く売る』という実績を先人たちが積んできた。現に(塩貝)健人や(佐野)航大といった若い選手が出てきた。次の世代に僕たちがいい影響を与えられるよう、しっかりやりたと思います」
小野伸二(フェイエノールト)、本田圭佑(VVV、フィテッセ)、ハーフナー・マイク(フィテッセ、ADOデン・ハーグ)、堂安律(フローニンゲン、PSV)といった錚々たるメンバーが欧州挑戦初舞台の地にオランダを選び、ファンに愛されてきた。フローニンゲンで名を馳せた板倉はブンデスリーガ(シャルケ、ボルシアMG)で活躍した後、完成されたDFとしてアヤックスに今季、入団した。
小川はコメントのなかで塩貝と佐野の名前を挙げた。ここで1度、2人の動向を振り返ってみる。

塩貝はヴォルフスブルクへの移籍に成功
塩貝を巡る市場の動きは激しい。
2023年4月 慶応大入学サッカー部入部
2024年4月 横浜Fマリノス特別指定選手(卒業後の入団内定)
2024年8月 NEC移籍、横浜F・マリノス加入内定解除
2025年6月 ザルツブルク移籍内定。移籍金は推定450万ユーロ(約8億2600万円)。その後破談、NECに残留
2025年1月 ヴォルフスブルク移籍。移籍金は推定1000万ユーロ(約18億円)。
佐野はジョイ・フェールマンの後継候補として昨年夏、PSVから打診があった。この冬の移籍市場では5大リーグへの移籍は実現しなかったが、NECは2000万ユーロ(約37億円)を要求していたという。最近、同クラブは世界的に有名な代理人、ジョルジュ・メンデス氏に協力を仰いだ。
かつて、佐野は「オランダリーグは攻撃的で、パスを繋ぐサッカーをするので、自分と合います」と語ったことがある。小川自身はオランダリーグをどう捉えているのか?
「オランダリーグは日本人に合っていると、僕は感じます。他のリーグの試合を見たり、話を聞いたりしていましたが、オランダのサッカーはどことなく日本と似ているところがある。後ろからしっかりつなぐオランダのサッカーは、テクニックのある日本人ならできる。オランダリーグにはGKロビン・ルーフス(23歳/NEC→サンダーランド)といったプレミアリーグで通用する選手がゴロゴロいる。フィットしやすいので、本当に日本人にお勧めできるリーグだと僕は思います」
選手もクラブも、サポーターも「オランダリーグはステップアップリーグ」と自覚しているから、「クラブを出たい選手vs選手を引き止めたいクラブvsクラブへの忠誠心はないのかと怒り狂うサポーター」という悲劇は生まれにくい。
「オランダはステップアップリーグなので、選手がみんな、個人の結果を残したがっている。その中で、どう自分を表現していくのか。サッカーは個人スポーツではなく、チームスポーツなので、僕も試行錯誤している。ここは、個の能力を出していかないと生き残れないリーグ。だから個の能力を引き出す戦術になっていると感じます」
オランダと日本の違いはピッチ内でも
“トップチーム”の選手はプロであり、すでに育成を終えた者たちの集まり――のはずだ。しかし、時おり私は「オランダではトップチームの選手も育成が続いている」と感じる時がある。例えばメキシコ代表DF/MFエドソン・アルバレス(現フェネルバフチェ)はアヤックスのMFとしては足もとが今ひとつだった。試合後の記者会見で彼は「なぜ活躍できているのか?」という問いにこう答えた。
「テクニックコーチのリシャルト・ビチュへとトラップ&ターンの練習を繰り返したんです。今では自信を持って、DFから受けたパスをターンして前に運ぶことができます」
まるで中村俊輔がテクニックコーチとして、J1トップクラブの選手の技術指導をするようなものだ。NECはどうなのだろうか? ディック・スフローダー監督によると、塩貝は自主練でコーチに付いてもらい、ボールを受ける前の動きを繰り返したという。
小川に「NECから個のレベルアップのサポートを受けたか?」とたずねると、こう答えた。
「それは少なからず、感じます。日本は自主練をさせてくれますが、個人的にアドバイスを受けるというのはあまりなかった。オランダは自主練が規制される分、短い時間でしっかりアドバイスをくれます。練習後に残ってシュート練習をしていても、トレーニングが工夫されていますし、コーチから『こうした方がいい』というアドバイスをかなりもらえる印象があります。
試合の時もそう。今日(対ズウォレ)では前半、ボールの競り合いでDFの1人に掴まれた。ハーフタイムにコーチから『身体をぶつけにいったら、相手の思うツボだ。DFの間にいて、そこから競り合いに行け』と言われ、後半、その通りにやったら競り合いに勝って、味方にボールを繋げるシーンがありました」
翌日、三戸舜介にも話を聞いた。
プロのサッカー選手は出来上がったものとして、監督は戦術に当てはめる。しかし、オランダはクラブが個のレベルアップをサポートする。プロでありながら若干、育成が続いているようなところがある。
「それはあると思います。僕もアシスタントコーチと居残りでシュート練習をしたりします。日本のサッカーは組織で戦うイメージがあると思います。しかし、欧州サッカーを見ていると、個の能力が高いので、個で行く選手が多い。だから日本にいたときみたいに『組織でやろう』と言っている場合じゃなく、自分ひとりで対応しないといけません。特に自分は攻撃の選手なので。こっちでは味方のサポートが少ないですし、僕がボールを持ったら『(ドリブルで)行け! 行け!』と叫ばれる。常に1対1の状況を作って『自分でどうにかしろ』という考えが強いと思います」
個を育ててチームの戦力になり、選手もクラブもウィン・ウィンの形でステップアップする。それがオランダリーグなのだ、と小川と三戸の話を聞きながら、あらためて思った。
(中田 徹 / Toru Nakata)

中田 徹
なかた・とおる/1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグなどを現地取材、リポートしている。






















