日本代表に歴史的敗戦…失われた「ブラジルらしさ」 W杯で再戦でも「プレスは効果」

ブラジルらしさということでは、ジニス暫定監督が最後の望みだった
昨年10月の強化試合で日本代表は初めてブラジル代表に勝利した。そして、今年の北中米ワールドカップ(W杯)でも再びブラジルと対戦する可能性がある。グループFの日本が1、2位で通過した場合、ラウンド32で対戦するのはグループCの1、2位。ブラジルかモロッコになるだろう。
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今回は参加チーム数が従来の32から48チームに増えたので、グループ3位でもそのなかの上位8チームはラウンド32に進める。その場合は他グループの1位と対戦することになる。最悪の組み合わせはフランスだが、開催国のメキシコ、カナダ、米国の可能性もあり、ドイツ、コートジボワール、セネガルかもしれない。だが、ブラジルよりもマシな気はする。
10月に逆転負けを食らったブラジルが、同じ轍を踏むことはなさそうだからだ。
あのときのブラジルはGKとCBがファーストチョイスではなかった。W杯では世界最高クラスのGKであるアリソンが起用されるだろうし、CBはマルキーニョスとガブリエウ、またはミリトンのコンビだろう。いずれも欧州ビッグクラブの中心選手だ。
日本戦では前半に2-0とリードしながら後半に3点を奪われた。1点目は日本のプレスに慌てたCBのミスパスが原因。その後も日本のハイプレスを外し切れず、ペースを奪われている。急に日本がギアを上げてきたのに対応できていなかった。
試合後にカルロ・アンチェロッティ監督は「良い教訓」と話していて、「大きな学びがあった」と述べているので対策はしっかり立ててくるはずだ。W杯でブラジルと再戦となったときにまったく同じことは起こらないにしても、似たような展開にはなるかもしれない。
10月の試合でブラジルは前半に2点をリードしたが、見ていてそれほど脅威を感じなかった。ハイプレスがあまり機能しておらず、日本は自陣からボールを運び出すことができていた。また、失点以外では日本の守備はそれほど崩されてもいなかったからだ。このあたりはおそらくW杯でもそう変わらないのではないか。
ブラジルサッカー連盟(CBF)は粘り強い交渉の末にアンチェロッティを招聘し、「世界基準の再構築」を掲げた。
かつてのブラジルなら「世界基準」など気にしていなかったと思う。ブラジルがブラジルらしくあれば、それで世界最高クラスだったからだ。初の外国人監督招聘は、ブラジルがブラジルであることを諦めたからといえるかもしれない。
ブラジルらしさということでは、フェルナンド・ジニス暫定監督が最後の望みだった。
すでにアンチェロッティと交渉していたため、ジニス監督は“暫定”だったわけだが6試合で解任されている。フルミネンセでリベルタドーレス杯を獲ったジニスのサッカーはジニス主義と呼ばれていて、かつてのバルセロナにおける「ティキ・タカ」と似ていた。フットサルのようなパスワークはブラジルの伝統を踏襲したものでもあった。
しかし、すでに代表選手の多くは欧州でプレーしていて、21世紀のセレソンは欧州化が加速していた。ブラジルらしさはすでに失われていて、ジニス主義をごく短期間に浸透させるのは無理だった。
アンチェロッティはDFとMFに技巧より機能性を求めている。ボールハンターを並べて守備の安定を図り、攻撃のエースであるヴィニシウスに自由を与えて活用しようという方針である。レアル・マドリーで成功したやり方でもあり、イタリア方式ともいえる。
ヴィニシウスが守備をしないのでハイプレスは徹底できず、DFとMFは守備力優先だから相手のプレスをかわしきれるかどうかは微妙。ブラジルらしさを捨てた新バージョンに合理性はあるが、構造的には10月と変わらない。つまり日本のプレスは効果が見込めるし、カウンターも打てると考えられる。
難敵なのは間違いないが、かつてのブラジルとはもはや別物になっているのだ。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)

西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。






















