日本人に欧州ファン大拍手…監督絶賛「ものすごく大事な選手」 現地評価急上昇の理由

鈴木唯人「信頼されているからこそ、チームのためにハードワークや守備を」
ブンデスリーガで、確実に評価を高めている日本人アタッカーがいる。フライブルクでプレーするFW鈴木唯人だ。今季チームに加入した鈴木は、シーズン序盤こそ順応する時間が必要だったが、昨年11月頃にはレギュラーポジションを獲得したといっていいほど、コンスタントにスタメン起用されるようになった。
そのプレーを見ていると、スタッツ以上に強い印象を残す場面が増えている。特に感じさせるのが、インテンシティを極めて高いところでキープしながら、プレークオリティがまるで落ちないところだ。
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試合開始と同時に足を止めることなく何度も何度もダッシュでプレスに走り、ボールを受けるために走り、ボールロストと同時に守備へ走り、そしてまたオフェンスへと走っていく。何度も後追いでプレスをかけ、ボールを奪い、チームを救う。
その価値を最も的確に言語化したのが、フライブルクの指揮官、ユリアン・シュースター監督だ。第18節、ホームでのハンブルガーSV戦後に直接話をすることができたのだが、チームにおける重要性について尋ねると、即座に高い評価が返ってきた。
「ものすごく大事な選手だよ。守備面でもオフェンス面でも非常に重要な選手だといえる。彼の持つ運動量、インテンシティには特筆すべきものがある。彼のプレスがチームをどれほど助けてくれているか。いてくれることをとてもうれしく思う」
勝敗を分ける緊迫した時間帯でも、鈴木の存在感は際立っている。試合終盤、それこそアディショナルタイムに入ってからでもその足は止まらないし、懸命にボールを奪取するその姿にファンは惜しむことなく大拍手を送り、シュースター監督も同意を示してくれた。
「まさにその通りだね。どんなに疲れている状況でも、あと一歩走って戦ってくれる。取り組み続けたことが成長につながっている。とてもポジティブな表れだ。ゴールを狙う力もあるし、チームの大きな助けになっている」
フライブルクは、過去のキャリアや選手の名前よりも、チームとしての規律と強度を重視するクラブだ。どれだけ有名な選手でも実をもたらさない選手は出場できない。そのなかで大事な選手と言い切られることの意味は小さくないではないか。
ただ闇雲に走っているわけではない。相手との距離、タイミング、コースを見極めながらプレッシャーをかけ、ボール奪取につなげる場面も増えている。実行度の高い守備が、チーム全体のリズムを支えているのだ。
その点について同じハンブルガーSV戦後に、本人にも尋ねてあった。
「監督から『お前にはそれができる』と言われていますし、自分自身も疲れているなかでも走れる感覚があります。行ったからといって倒れるわけでもないので、行けるなら行こうという気持ちでやっているだけです」
話す言葉に力みがないのがいい。無理をしているわけではなく、やらされているわけでもないからだ。自分の出せる価値として身体に染み込んできていることがうかがえる。
オフェンスの選手が守備に走りすぎると攻撃のクオリティが落ちる、という議論はよく聞かれる。しかし、ブンデスリーガのトップレベルで求められているのは、その二者択一ではない。高いインテンシティでチームタスクに貢献し続けながら、なおかつオフェンスでも違いを生み出せるか。
その両立が、評価の前提条件になっているが、その条件を確実にクリアしつつある。彼を経由することで攻撃にリズムとテンポが生まれる場面が増えてきている。ゴール前に顔を出すだけでなく、攻撃の循環点として機能し始めている点も、評価を押し上げている要因だ。
とはいえオフェンスの選手なら、どこかでゴールやアシストへのこだわりだってあるのでは? どんな心構えでプレーをしているのか? 昨年12月のELザルツブルク戦後に、そんな数字への向き合い方について、こんな言葉を残している。
「もちろんゴールやアシストは取りたいです。でも、それがエゴになったら何もついてこない。やることをやって、あとはご褒美だと思っています」
前線の選手として結果を求める意識は持ちつつも、それに囚われすぎない。
「信頼を得たから、何かを免除されるわけではない。信頼されているからこそ、チームのためにハードワークや守備をしたり。そういったところでチームメイトもさらに信頼してくれる。やるべきことを見失わずにやっていきたいなと思いますね」
この価値観は、まさにフライブルク、そしてドイツサッカーの評価軸と重なっている。走れること、戦えること、そしてその上で違いを出せること。鈴木は今、そのすべてを備えつつある。
19節のケルン戦では同点ゴールをアシストするなど、2-1の逆転勝利に貢献した。勝ち点3を喜びながら、もっとできると反省を忘れないのが鈴木らしい。
「内容の面で、僕自身まだやらないといけないことが多いし、ミスもあります。全部成長しないといけない。喜ぶのは喜んで、切り替えて。ヨーロッパリーグも来週グループリーグ最後があるので、また頑張ります」
日本代表では南野拓実が左膝十字靱帯断裂で長期離脱、久保建英も左太もも負傷と、悲しい怪我のニュースが続いている。まず第一に南野や久保が順調に回復して間に合うことを祈りながら、成長を続ける鈴木は共闘でも、代役でも、ジョーカー役としても、どんな役でも代表にとってプラスの存在になってくれるはずだ。
それだけの期待をしたくなるだけの躍動感がある。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。






















