J1入り先輩の11番を“継承”「俺がやってやる」 王者のブレイク候補…武器は「何一つ飛び抜けてない」

神村学園3年MF奥田敦斗「CB、GK以外はどこでもできます」
高円宮杯プレミアリーグは鹿島アントラーズユースの優勝で、第104回全国高校サッカー選手権大会は神村学園の初優勝で幕を閉じた。
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2025年シーズンを終え、各クラブユース、高体連のチームは新チームをスタートさせ、新たな戦いに向けて準備を進めている。4月のリーグ本格開幕を前に虎視淡々と上を目指すチーム、選手にスポットを当てていきたい。
今回は新人戦鹿児島県大会から。鹿児島城西との決勝戦を延長の末に2-1で制した神村学園のアタッカー・奥田敦斗について。「CB、GK以外はどこでもできます」と胸を張る奥田は、切れ味鋭いドリブルを持つアタッカーとして、プロ内定を掴み取った偉大な先輩から11番を引き継いだ。
サイドやトップ下の位置でボールを持てばアジリティーを生かしたドリブルでラインブレイクをし、中盤の底でボールを持てばテンポの良いパス出しで攻撃のリズムを作り出す。
一見、ドリブラーのように見えるが、そのプレーの幅は非常に広く、ポジションによって自分の長所をうまく使い分けている印象を受ける。新人戦初戦ではボランチとしてチームをコントロールし、準決勝の出水中央戦では右アタッカーとして鋭い突破を何度も披露した。
「左右両方でボールを蹴ることが出来るので、サイドバックでもサイドハーフでも両方こなすことができますし、自分の武器は攻守の切り替えのスピードと強度なので、どのポジションでもそれを発揮するイメージでプレーしています」
神村学園中等部時代、ドリブラーとして頭角を現し、ナショナルトレセンU-14、JFAエリートプログラムU-14にも選出された。だが、海外チームや強豪校とのトレーニングマッチを通じて、「フィジカルで自分の良さを消されてしまったので、ドリブルだけじゃダメだと思いました」と、そこからフィジカル強化、バランス感覚、そしてアジリティーなどベースアップに着手した。
「自分の弱みから目を逸らさないように、フィジカルと判断を鍛えることを意識するようになりました。相手が複数でも突破ができて、かつ周りを使いながらパスで崩してフィニッシュに絡むなどバリエーションを増やす。スピードを止められても、判断で打開する力を身につけないと、自分が上で生き残っていくことは出来ないと思いました」
高校生活は順風満帆ではなかった。中学3年生の時に全国中学サッカー大会を制し、その勢いを持って高等部に進学をしたが、昨年まではプレミアWESTの登録メンバーにすらなれず。選手権では登録メンバーには入ったが、1度もベンチ入りすることができなかった。
それでも中学時代の気づきを忘れることなく、判断の質やフィジカルベースを怠ることなく磨き続けた。
「正直、同級生のDF竹野(楓太)やMF花城(瑛汰)がトップに上がって活躍する中で、自分は置いていかれている感覚がありました。でも、中学の時のように自分に矢印向けないと成長がないと思ったので、駆け引きは自分がプレーするだけではなく、周りの選手を見て分析をして学ぼうと思いました」
その中で目に止まったのが1年先輩の右サイドバック・細山田怜真(選手権後にスペイン4部のUEサン・アンドレウへ加入)だった。
「怜真さんはスピードがめっちゃあるわけでも、ドリブルがめっちゃあるわけでもないんですけど、ボランチでもサイドバックでプレーしていても、『本当にうまいな』と思うことが多くて、『それはなぜなんだろう』と思うようになったんです。よく見ると周りの使い方が本当にうまくて、駆け引きをしてどのポジションでも常に相手の逆を取って、かつ走力と強度を持って全力でプレーしていた。中学時代からうまいと思っていたのですが、その理由が分かれば分かるほど、自分のお手本、目標になって行ったんです」
細山田は3年生になっても思うようにトップで出番を掴めなかったが、プレミアWEST後期からメキメキと頭角を現してレギュラーの座を掴み取ると、選手権で大車輪の活躍をして優勝に貢献。一気にスペインへ羽ばたいていくというサクセスストーリーを目の当たりにして、「僕の目は間違っていなかったんだ」と思ったことも、今年を迎える上で大きな自信にもつながった。
「選手権でベンチ入り出来ない中でも、『僕らベンチ外メンバーがしっかりしないと日本一にはなれない』と思って、自分なりにチームを盛り上げる立ち振る舞いが出来たことも自信になっていますし、プラスにしていかないといけないと思っています」
こうした積み重ねがあったからこそ、最高学年となった今年はMF徳村楓大(FC町田ゼルビア)が背負った11番を託され、大ブレイクの予感を漂わせる選手となりつつある。
「何か1つ飛び抜けているものが自分にはない分、パス、クロスの質、ドリブルの判断だったり、強度だったり、いくつも武器があるのが自分の長所だと思います。今年は昨年の結果というプレッシャーはありますが、『次は俺がやってやる』という気持ちで臨みます」
攻撃のアクセントになれて、組織を円滑に動かす潤滑油にもなれる。期待のユーティリティーは全国2冠の看板をも己の力に変えて、与えられたポジションでその才を発揮する。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。





















