逸材CBが選んだ選手権より自分の成長 目指す“フェンスの向こう側”「常にプロの雰囲気が伝わってくる」

鹿児島U-18でプレーするCB川上篤人
高円宮杯プレミアリーグは鹿島アントラーズユースの優勝で、第104回全国高校サッカー選手権大会は神村学園の初優勝で幕を閉じた。
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2025年シーズンを終え、各クラブユース、高体連のチームは新チームをスタートさせ、新たな戦いに向けて準備を進めている。4月のリーグ本格開幕を前に虎視淡々と上を目指すチーム、選手にスポットを当てていきたい。
今回はとある練習試合から。鹿児島ユナテッドU-18には将来期待の大型CBがいる。1年生のCB川上篤人が口にする、「僕がここにいる意味」とは。
185cmのサイズとフィジカルの強さを持ち、球際の強さ、身体の寄せのテクニックとボール奪取力を持ち、DFラインの裏に落とすロングフィードは一級品。鹿児島ユナイテッドFCの練習場である鹿児島ユナイテッドFCトレーニングセンター(称・ユニータ)の人工芝グラウンドで行われた佐賀県の龍谷高校との練習試合を見ていて、プレーだけではなく、その佇まいとピッチ上発信力にも目を奪われた。
相手のショートカウンターに対して、首を振りながらラインコントロールをし、縦パスがFWに入る瞬間に身体を当てて相手の動きをピン留めしてから、鋭く前に出て奪い取る。
「相手の力をうまく利用して自分が前に行くことは大事にしています。それはFWの経験が生きていると思います。このクラブに来て、CB、ボランチ、FWといろいろなところで鍛えてもらってきたことが大きいと思っています」
鹿児島県で生まれ育った川上は、小学校の時に鹿児島U-12の1期生として地元のJクラブの下部組織に入った。中学進学時も神村学園中学校、鹿児島城西高校と中高一貫教育を敷く鹿児島育英館中学、強豪街クラブである鹿児島太陽SCなど多くの名だたるチームがある中で、鹿児島U-15に進み、U-18へと鹿児島一筋だ。
「Jクラブの下部組織であれば、自分の努力と実力次第でどんどん上の環境に行けることが魅力でした。神村学園中や育英館中に進む先輩はいましたし、僕もそういう選択肢はあったのですが、僕は選手権とかより、どんどん上のレベルで自分を磨きたいという気持ちが強かったので、この選択をしています」
実際に中学2年生の段階でU-18に合流をして経験を積み、高校1年生の段階でトップチームの練習にも参加するなど、先取りした経験を積んでいる。
「ユースを卒業してからトップ昇格というより、高2、3のうちにトップ昇格をしたいなと思っているので、ユースでちょっとした違いじゃなくて、圧倒的な違いを見せて、トップでも違いを見せられるような存在になりたいと思っています」
口だけではない。CB川上篤人はしっかりと自分の現状を受け止めて、周りを見ながら成長に必要なものを取り入れようとする意欲と創意工夫する力を持っている。
昨年の国体では神村学園の米村颯真と鹿児島城西の松久保奏太と共に3バックを形成し、ベスト8進出に貢献した。その際に「(準々決勝で)東京都選抜と戦ってPK負け(1-1からPK3-5)を喫して、本当に悔しかったですし、もう一度成長をして、次は関東のチームなどに負けない選手になりたいと思った」と、基準を常に高い位置に置くことの大切さを再認識した。
さらに神村学園の選手権優勝もテレビで見届けると、「神村は去年と比べて、フィジカルと強度の部分が圧倒的に違うと感じました」と、羨ましさや悔しさよりも、「なぜ勝ち進むことができたのか」という観点で試合を見つめていた。
「強さの秘訣とここまで大きな変化をした理由を探りながら見ていました。足元の技術や判断も大事ですが、フィジカル、走る、攻守の切り替え、球際はとても重要なことだと神村を見て改めて実感したので、よりそれを個人としても取り入れようと思っています」
今年は高校2年生になるが、トップに関わるための勝負の一年と捉えている。この龍谷戦のアップの段階では隣の天然芝ピッチではトップチームが練習をしており、低いフェンスを挟んですぐ隣に目指すべき場所がある環境だ。
「並松(亨樹)監督を始め、コーチからも常に『もっと上を狙え、もっと出来ると思え』と言ってくれて、モチベーションを刺激してくれますし、隣からは常にプロの声や雰囲気が伝わってくるんです。まだ僕は2回しかトップの練習参加をしたことがないのですが、常に隣からプロの声が聞こえてくる。特にCBの選手が常に大きな声を出していますし、ピッチ全体を見て、チーム全体を動かしているように感じるので、僕ももっと見習っていかないといけないと思っています」
逆に自分の声を隣の天然芝ピッチに響き渡らせるつもりでやる。鹿児島期待の1年生CBは、まさに野心と向上心に満ち溢れている。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。





















