スペイン1部と契約も…入国できず自ら営業 日本人が22歳で引退「自分がビジネスを」

井手ウィリアム航輔は、コロナ禍もあってスペイン1部レガネスを退団した
2019年にスペイン1部ラ・リーガのCDレガネスと契約を結んだ日本人を覚えているだろうか。コロナ禍もあって帰国することになったDF井手ウィリアム航輔は、プレーが叶わないまま2020年6月に契約満了で退団。現在は株式会社セガで「サカつく」などの開発に携わる異色のキャリアにインタビューで迫った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大/全5回の4回目)
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LAギャラクシーのアカデミーで育ち、ドイツでのサッカー留学を経て、2019年2月にレガネスとプロ契約を結んだ井手。その後、スポンサー企業の訪問などのために日本に帰国し、プレシーズンからトップチームに合流できる予定になっていた。ところが様々な問題で合流が遅れている間にコロナ禍に突入する。
スペインに入国できなくなってしまったが、「Bチームで実力を証明して、AとBを行き来しながら、プロの道筋を勝ち取っていけるだろうなというのはありました」となんとかデビューできる道を探った。そのなかで、日本で自主トレに励みながら、自らの足でスポンサーになってくれる企業を探すことにした。
「自分で営業活動する選手って、絶対いないと思っていました。もちろん、日本での実績や知名度があれば、クラブやスタッフが動いてくれる。でも僕は、日本ではほとんど無名の存在だった。だからこそ、自分の足で企業を回って、スポンサーになってもらえないかと直談判するしかなかったんです」
結局、興味を持ってくれた企業はあったものの、「実際にお金を出してくれるというところまでは辿り着けなかったですね。スポンサー費用は、金額的には2000万円とか2500万円。だけど、自分に対してその金額を出してくれる人はいなかったですね」と井手。出場機会は無く、2020年6月に契約満了となった。
「そこで出会った経営者さんとはまだつながりを持っています。いろんな人とつながって、よりビジネスに興味を持つきっかけになったというか、一流で成功している人たちのマインドやビジネスに対する情熱を見て、それは素晴らしいものなので、引退するきっかけの一つにはなっているかもしれないですね」
その後はJリーグの練習にも参加したが、ここでサッカー選手としてのキャリアに終止符を打った井手。しかし、「純粋に自分に巡り合わせが来なかった。それを掴める人は掴めていただろうし、自分の実力不足としか思わないですね。コロナ禍を理由に成功できなかったとは思わないです」と清々しい表情で明かす。
現役にこだわる選択肢もあったなかで、「ただサッカーを続けたいだけではなくて、サッカーを通して何か貢献だったりとか、自分がこの世の中に残せるものが欲しかった。だから、その道はたぶん違うなと思って、Jリーグでプレーを続けるという道もありましたが、その道は選ばなかったですね」とキッパリ。22歳という年齢で違う世界へと飛び込んでいった。
「いろんな経営者さんに出会ってきて、自分はビジネスマンとして培ってきたものが何も無いから、遅れているじゃんと思って。だったら今このタイミングで決断をして、ビジネス、経営をちゃんと学んで追いつかないといけない。その努力をめちゃくちゃしないといけないだろうと思って引退を決意しました」
なぜこのような選択をできたかというと、若い頃から明確なキャリアビジョンを持っていたからだ。「プロ契約のときに5年後、10年後、15年後のビジョンがあるという発言をしました」という井手。ドイツ時代から「サッカー選手としての軸とサッカー選手ではなかったときの軸」を持って人生を考えていた。
「サッカー選手ではなかったときの軸は、スポーツや海外経験を通じて子どもたちに価値ある経験や体験を届けられる事業を作ること。あとは自分の海外、アメリカでずっと育ってきた経験を伝えられるような、貢献できるような事業を残していくというのがキャリアの元々のビジョンでした」
それから約5年の月日が経ったが、「軸は今でも変わっていないですね」と笑顔を見せる井手。現役引退後はベンチャー企業などでキャリアを積み、平行して筑波大学大学院に進学。修士号取得後はセガに就職しながら、サッカー関連の自らの事業「SOLO ARENA」を立ち上げるなど多忙な日々を送ることになる。
(FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大 / Keita Kudo)




















