J1クラブ争奪戦の絶対的エース「当たり前」 120分の激闘後に…記者驚愕の“チームファースト”

国士舘大のエースストライカー・本間凛
大学サッカー界の年内最後の試合となる第74回全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)が開幕した。今年は全国7地域のリーグ戦で上位となったチームが12月8日に一発勝負のプレーオフを戦い、勝者が関東王者の筑波大学、九州王者の福岡大学、関西王者の関西学院大学、東海王者の東海学園大学がいるそれぞれのリーグに入って決勝ラウンドへ。敗者が強化ラウンドとなるリーグ戦に移行するという方式で覇権を争う。
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ここではインカレで輝いた選手たちの物語を描いていく。第21回は12年ぶりのインカレ決勝進出を果たした国士舘大のエースストライカー・本間凛について。3年生ながらすでにJ1クラブが激しい争奪戦を繰り広げる逸材が大事にする「チームファースト」とは。
インカレ準々決勝の阪南大戦、本間は120分間フルに戦い抜いた。今大会でまだノーゴールでこの試合もゴールは生まれなかったが、その結果以上に本間の前線での存在感はずば抜けていた。
守備面では相手CBだけでなく、サイドバックにも強烈なプレスを掛けに行き、そこで剥がされても2度追いをしたり、ポジションを修正するべく素早く中央のポジションに戻って、ポジティブトランジションが起こったらすぐに起点になれるように準備をしたり、プレーの連続性、そのクオリティーが非常に高い。
前線でガムシャラに守備をするFWは何人も見てきたが、プレスを剥がされてもスピードを落とさずに、次なるポジショニングにきちんと移行するFWはなかなか見ない。ただのハードワークではなく、きちんと頭を働かせ、次の展開も意識できている稀有なストライカーと言っていい。
もちろん点を取る力はこの大会で結果につながっていないだけで、関東大学サッカーリーグ1部では13ゴールで得点王獲得と実証済。すでに複数のJ1クラブが獲得レースを繰り広げているのも納得ができる。
阪南大戦後にミックスゾーンで待っていると、次々と国士舘大の選手が出てくるが、一向に本間の姿が現れない。もうバスに乗り込んでしまったのかと思い、他の部員に聞いてみると、「凛は今、控えメンバーの練習のサポートに入っています」と返ってきた。
驚きつつ、しばらく待つと、荷物を持った彼が姿を現した。120分間全力で走り抜いたエースは丁寧にお辞儀をしてやってきた。
「今年の1年間は『頼られるエース』として、結果にこだわってやってきました。リーグ終盤に怪我をして、チームに迷惑をかけてしまった分、この大会でしっかりとチームに貢献したいと思っています」
こうハキハキと答える本間に、練習のサポートに入っていた真意を聞いてみた。
「僕の中で『試合に出ているから』という考えは持っていません。スタメン、ベンチで分けるのは好きではないですし、試合に出ているということは多くの選手たちに支えてもらっていることとイコールなので、自分が享受したものがある以上、僕はそれをみんなに返さないといけない。だからこそ、練習のサポートをすることは当たり前のことだと思っています」
関東第一高の時から見ているが、ピッチ上で躍動感と迫力あふれるプレーを発揮する一方で、周りの人に対する気配りや率先した行動ができる人間だった。大学サッカーに入っても彼はその真摯な姿勢をさらに磨き上げている。
「僕だけではなく、国士舘大のサッカー部としてそう考えている選手は多いと思います」と口にしたように、他の試合に出ていた選手もミックスゾーンに大きな荷物を抱えて出てきたり、何度もロッカールームを往復してテキパキと片付けをしたりと、率先して行動している姿を見た。
「こういう大会は総力戦なので、誰にどうチャンスが来るか分からないですし、ベンチ入りメンバーには来年もともに戦う仲間がいる。その選手たちがコンディションを維持したり、上げたりすることはチームにとって重要なことなので、きちんとやりたいんです。それに今日も『4年生のためにやる』ということをずっと考えていましたし、それはこれからも変わりません」
チームのために。準決勝の関西学院大戦はスタメン出場するも、ハーフタイムで交代。今大会初ゴールはお預けとなったが、誰がなんと言おうが国士舘のエースは本間であることをチーム全員が分かっている。それだけひたむきに、全力でプレーする姿にチームは勇気づけられてきたから。本間が退いた後も、チームは攻撃的な姿勢を崩さすに、3-1で勝利。ついに12年ぶりの決勝進出を果たした。
決勝の相手は今季リーグ戦で優勝をした筑波大。彼らの後塵を拝し、2位に終わった悔しさは心に刻み込まれている。
「4年生を優勝するまで辞めさせるわけにはいかないし、トーナメント表が出たときに、筑波大と決勝で戦うことしか考えていませんでした。それは僕だけではなく、みんなが思っているからこそ、自分の結果がどうこう関係なく、全力に戦うだけです。どの試合でも勝てばみんなのおかげ、負けたら自分のせいだと思っているので、最後はみんなで日本一を勝ち取りたいです」
いざ、決勝へ。泣いても笑っても今季最後の大舞台で国士舘大のエースとして、最前線に凛と咲き誇る。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。




















