J1オファー断りJ2内定「成長できる」 U-18主将が描くビジョン「土台を築いていきたい」

U-18日本代表のキャプテンマークを巻いた神村学園DF中野陽斗
SBSカップ初戦の静岡ユース戦でU-18日本代表のキャプテンマークを巻いたのは、神村学園高のキャプテンでもあるDF中野陽斗(J2・いわきFC内定)だった。
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「直前まで何も言われていなくて、今日、『キャプテンは陽斗で』とキャプテンマークを渡されました。キャプテンは(5月のU-18日本代表の)スイス遠征の時にやったことはあるので、別に驚きはありませんでした」
この言葉通り、3バックの右に入った彼は堂々たるプレーを見せた。前半は少しミスもあったが、ビルドアップ面で積極的にボールを受けてパスをつけたり、サイドチェンジやロングフィードを入れたりと、最終ラインから攻撃を組み立てた。守備面でも藤枝MYFC内定の静岡ユースFW山﨑絢心のスピードに乗ったドリブルに食らいつき、湧き出てくるアタッカーに対しても鋭く身体を寄せた。
「自信を持ってまとめることと、いつも通りのプレーを心がけました。もちろん代表のキャプテン、最終ラインの役割は重いですが、この重さがよりモチベーションを上げてくれるというか、自分の成長につながると思っています」
月末には第104回全国高校サッカー選手権大会を控えている。夏のインターハイ王者として挑む神村学園にとって、冬の王者になって2冠達成することは重要な目標となっている。それだけに今回、U-18日本代表に選出された際に、大会直前にキャプテンである自分がチームを離れることへの影響を危惧し、少し参加を迷ったという。だが、有村圭一郎監督から「自分が行きたいと思うなら行けばいいと思うよ」と言われたことで、「僕がここで少しでも成長することで、チームにプラスのパワーを還元できたら、神村学園はもっといいチームになると思ったので、参加したいと有村監督に伝えました」。
MF福島和毅と共にU-18日本代表に覚悟を持って合流しただけに、初戦をキャプテンとして3-0の完封勝利を収めたことは大きな手応えとなった。
「これからの相手であるオーストラリア、スペインとどれくらい戦えるかが本当に楽しみですし、何よりU-18日本代表にはFW徳田誉(鹿島アントラーズ)選手、新川志音(サガン鳥栖U-18)選手など、すでにJリーグを経験している選手がいるので、彼らから学ぶことも多いと思っています。今日も2人が入って雰囲気がガラッと変わったし、練習でも試合でも徳田選手の動き出しは、常にパスの出し手とのタイミングをしっかりと図った上で動き出しているのを感じるので、僕もそのタイミングを逃さない、正確なフィードやパスを送り込めるようにしていきたい。本当にいい経験になると来て改めて思っています」
中野自身も卒業後はいわきFCに進んでJリーガーになる。守備センスとキックセンスを高いサッカーIQを駆使して守備を支えるCBとして、J1クラブからの正式オファーもあったというが、「いわきFCには合計3週間ほど行かせてもらって、チームコンセプト、練習の質、スタッフの熱量、インターハイやフェスティバルで神村学園としてもお世話になったいわきの地域の人たちの温かさを感じた。いきなりJ1クラブに行くよりも、『成長できる』と感じたいわきFCでしっかりとプロとしての土台を築いていきたい」と、じっくりと将来のビジョンと自分と向き合った上での決断だった。
着実に地に足をつけて成長をしようとする姿勢と、周りを引っ張るリーダーシップがある限り、彼は7日間の代表活動で多くのものを手にしてチームに帰っていくに違いない。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。


















