日本に現れた”稀有な存在”「何を言われようと」 相手も驚愕…18歳逸材FWが貫く「何も始まらない」

静岡ユース戦で2ゴールを決めた新川志音【写真:安藤隆人】
静岡ユース戦で2ゴールを決めた新川志音【写真:安藤隆人】

鳥栖でも活躍するU-18日本代表FW新川志音

 SBSカップ初戦のU-18日本代表vs静岡ユースの一戦。1-0で迎えた53分に投入された2人のFWが試合の流れを一気に変えた。

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 鹿島アントラーズのFW徳田誉とサガン鳥栖U-18の新川志音。2トップを組んだ2人はポストプレー、ラインブレイク、そしてシュートセンスを存分に発揮し、静岡ユースの反撃の糸口を完全に遮断した。

 その中でも2ゴールをあげた新川のシュートスキルは圧巻だった。66分、左ウィングバックの佐藤海弘の浮き球のパスを、ゴールを背にしながらジャンプして胸でコントロールをすると、着地した瞬間、右から寄せて来たDFに上半身を入れながらボールコントロールをすると、入れ替わった瞬間に倒れ込みながら左足を振り抜いた。

「本当は右足を打ちたかったんですけど、相手が外側にいたので、ちょっと内側に入って左足を咄嗟に出して決めました」

 一連の動きは身体能力の高さとシュートスキルが凝縮されていた。さらに75分には徳田の反転スルーパスにタイミングよく抜け出して、GKとの1対1を冷静に制してシュートを突き刺して試合を決めた。

「自分の特徴はゴールを奪う力。シュートを打たないとゴールに入らないので、積極的にシュートを打つというところは常に意識しています」

 シンプルかつ当然の言葉だが、これを実践できるかとなると話は大きく変わってくる。「積極的にシュートを打つ」という言葉は育成年代だろうが、プロだろうが、重要な姿勢であることには変わりはないが、年齢が上がっていくにつれて、実践することはどんどん難しくなってくる。それは周りの守備のレベルが上がることはもちろん、戦術の落とし込みや多様化によってゴール前の役割も増えていくことで、どんどん失われていく姿勢だ。

 だが、新川はそれを持ち続けられている稀有な存在と言っていい。サガン鳥栖U-18出身の選手や大学生はよく新川の名前を挙げるが、「どこからでもどんどん狙っていく。何を言われようと狙っていく姿勢がすごい」(先田颯成、関西学院大)など、シュートへの積極性を示すものが多い。なぜこの姿勢を強く持ち続けられているのか。直接本人に問うと、明快な答えが返って来た。

「僕はそこまで足が速いタイプでもないし、足元(の技術)がめちゃくちゃあるかと言われたらそこまではない。だからこそ、積極性は絶対に忘れてはいけないと思いますし、どう違いを見せるかといったら、やっぱりゴール前のクオリティだったり、シュートの精度、強烈さだったりだと思う。これまでシュートは外している本数は多いですが、やっぱり打っていかなきゃ何も始まらないので、打たないといけないと思っています」

 もちろんただ闇雲に打っているわけではない。中学時代に所属した大阪のRIP ACEでは軸足抜きシュート(シュートの際に軸足を地面から離す・抜くフォーム)、蹴り足着地などを学び、「無理が効くようになって、難しい体勢からでも反転してシュートを打てるところなどにつながっていると思います」と、まさにこの試合の1点目のように、正確なシュートを射抜けるようになった。

 積み重ねた努力とゴールへの渇望が、「まずはシュート」というマインドを確固たるものにしている。今季、高校3年生ながらJ2リーグに33試合出場をして、3試合連続ゴールを含む5ゴールをマーク。シュートシーンも強烈なミドルシュート、ドリブルで相手を交わしてからのテクニカルなシュート、反転シュート、ヘッドと多彩で、ゴールが遠くても迷わず狙う姿勢がゴールにつながっている。

「今季を振り返ってはまさか自分が2種登録されて、開幕戦でベンチに入れるなんて思ってもいませんでした。年代別日本代表もそうですし、びっくりするようなことがたくさん起きた充実した1年でしたね。でも、たくさんの試合に出してもらったからこそ、もっと点数を取れるチャンスはあったし、もっとチームの勝利に貢献できたと思うので、まだまだ成長していかないといけないところがたくさんあると感じる1年でもありました」

 プロサッカー人生はまだ始まったばかり。ここからどんどん成長をしていくこともできるし、逆に多くの壁にぶち当たっていく。だからこそ、新川の心の中にずっと培って来たこのマインドが自分の未来を切り開いていく重要な鍵となる。

「シュートを外して落ち込む気持ちは多少あるかもしれないですけど、試合の中ですぐに切り替えてやっていかないといけないと思いますし、ミスを恐れていたら決まるものも決まらなくなると思うので、そこは自分が常に大事にしているところでもあります」

 さらに新川は20日に行われたU-18スペイン代表との試合でも、0-1とリードを許した前半12分に持ち味を発揮する。ボールを奪ったFW徳田からパスを受けると、反転から左足を一閃。鋭いシュートはゴール左隅に突き刺さった。

『打たない後悔』よりも、『打ってからの切り替え』を。ぶれない信念を持って、新川志音はSBSカップでの躍動と、来季に向けての決意を固めてゴールを狙い続ける。

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

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