北朝鮮は「日本をデータで上回っている」 育成年代で突きつけられた”差”「世界には追いつけない」

佐々木則夫女子委員長が取材に応じた【写真:砂坂美紀】
佐々木則夫女子委員長が取材に応じた【写真:砂坂美紀】

佐々木則夫女子委員長が取材に応じた

 日本サッカー協会(JFA)の佐々木則夫女子委員長が12月18日に都内で取材に応じ、育成年代の強化や日本女子代表(なでしこジャパン)の現在地について熱く語った。特に、近年のアンダーカテゴリーの世界大会で圧倒的な強さを見せる北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と、日本の育成環境の整備についての構想を語った。

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 2021年12月に就任以来、育成年代やアンダーカテゴリーの整備にも力を注いできた佐々木女子委員長。12月21日に埼玉スタジアム2002で行われる「JFA U-18女子サッカーファイナルズ2025」についても「クラブと高校のチャンピオンがタイトルを争うことで、非常に高い熱量の試合が期待できる」と、JFAアカデミー福島と大商学園高等学校の対戦にも大きな関心を寄せている。男子のようにクラブや学校の枠を超えたU-18年代のリーグがない女子サッカー界にとって、貴重な大会だからだ。

 これまで競技人口が少なかった女子サッカーだが、2011年の女子W杯優勝をきっかけとして徐々に増加傾向が続いている。ここ数年は、競技継続が難しかった中学・高校生年代でプレーする受け皿が増えたことで、競技を続けられる環境が整いつつある。しかし、既存の大会やリーグ形式だけでは、競技力向上には不足している部分がある。

 JFAアカデミー福島を例にとると、2010年からなでしこチャレンジリーグ(2部相当)に参入し、現在もなでしこリーグ2部でシーズンを戦っている。年代に捉われない試合を重ねることで選手の強化が進み、今やなでしこジャパンで活躍する谷川萌々子や松窪真心、古賀塔子などを輩出している。

 佐々木女子委員長は、今年3月に新設された女子技術部のトップでもあるため、「ユース年代の育成を改革していかないと、代表の強さにもつながらない。技術部会でも検討を重ねている」と、中学・高校年代がクラブや学校の枠を超えての再編は現在進行形で続ける予定であると、改革への一端をのぞかせる。

北朝鮮のデータを分析 “日常”の強度を上げなければ世界には追いつけない

 さらに佐々木女子委員長は、近年のアンダーカテゴリーの世界大会で圧倒的な強さを見せる北朝鮮についての分析を丹念に行っていることを明かした。昨年のU-20女子W杯では3度目の優勝を飾り、今年のU-17W杯では4度目の優勝を果たしている。

 U-17やU-20年代のデータを引き合いに出し、「DPR(北朝鮮)との試合が最もインテンシティ(強度)が高い。走行距離やスピードに乗った技術の質で、日本を上回っているとデータで出ている」と語る。

 北朝鮮は各種年代ごとの長期的な強化を年間通じて進めて、成功させている。それに対し、日本は年代別代表の活動の期間に限りがある。佐々木女子委員長は「代表に来た時だけ頑張るのでは遅い。選手が普段いるクラブや高校での“日常”の強度を上げなければ、世界には追いつけない」と危機感を抱いている。

 来年は、U-17とU-20の女子W杯が開催される。U-20女子W杯では2大会連続で準優勝となっているだけに、次こそ頂点を目指したいところだ。

 前回のW杯王者のスペインをはじめ、ヨーロッパ各国も育成年代の強化を重ねており、いずれも激戦が予想される。佐々木女子委員長は、アンダーカテゴリーの底上げこそがなでしこジャパンの復権”に不可欠であると確信しており、「様々な施策を構想中である」という。

 各国の女子サッカーのレベルが上がっていく中で、さまざまな垣根を超えた強化策は急務である。例えば、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグのようなトップレベルの戦いを日常的にすることも必要であろう。監督としてなでしこジャパンを世界一に導いたその手腕を活かし、日本女子サッカー界全体のボトムアップを図ることに心血を注いでいる。

(砂坂美紀 / Miki Sunasaka)



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