シーズン中に改善も「VARが介入すべき事象で未介入」 J1で求められるピッチ上での精度向上

今季J1のVARについて審判委員会が総括した【写真:徳原隆元】
今季J1のVARについて審判委員会が総括した【写真:徳原隆元】

17日にレフェリーブリーフィングを実施

 日本サッカー協会(JFA)の審判委員会は、12月17日にレフェリーブリーフィングを実施した。J1における重要度の高い局面での判定「キー・インシデント」の判定について、昨季からの改善は見られたがさらに精度を上げることと、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)介入に関する課題が話された。

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 このキー・インシデントに分類される場面はJ1の380試合で165回あり、ピッチ上での判定は正しかったものが107回で64.85%だったとされた。そして、その残り58回のうちVARの介入によって正しい判定に導かれた39回を合わせた、最終的な判定の正しさは89.57%になったという。これは、昨季は59.6%と91.2%であり、目標値は65%と95%だったというデータも紹介された。

 この集計はPKやレッドカード、退場になる2枚目のイエローカードが出た場面を指すという。ピッチ上の判定精度に対する約65%という数字を出すことによって、35%はミスをしているという見え方になってしまいがちなものだが、PKやレッドカードの判断がされたものは自動的に算入するものの、ノーファウルとしたものについては「際どい場面を見極めたもの」は算入するが、反則でないことが明らかな場面は集計の対象外になるという説明がされた。つまり、基本的には重要度や難易度の高い場面の判定だけを集めたものの数字になる。

 JFA審判マネジャーの佐藤隆治氏は、現場で正しく判定できなかった58回の判定のうち、難易度別に「期待された判断(8回)」、どうしても選手同士で重なって隠れてしまう位置関係など「難しい判断(45回)」や「非常に難しい判断(5回)」に分類しているとして、「この8回はJ1のレフェリーならピッチ上で判定してほしいもの。残りの50回の部分はVARの力も使っていくもの」と話す。そのうえで、このような判定の精度を高める取り組みを継続していくと話している。

 一方で、VARの介入について、特にシーズン前半戦は「VARが介入すべき事象への未介入」が見られたと話し、夏の中断期間中に行われたキャンプでの再確認もありシーズン後半戦は改善傾向が見られたと話す。VARの介入により主審がオンフィールド・レビューを実施しても判定が変わらない場面もあったが、佐藤マネジャーは「違うと思ったものを主審に見せるところまでがVARの仕事」と話した。

 最終的にはVARも含めた審判団がチームとして正しい判定を行うことが最も重要なことだが、佐藤マネジャーは「まずはピッチ上での判定(オンフィールド・デシジョン)の精度を上げること」と、審判員に求めるベースは変わらないと強調していた。

 また、こうした判定の正しさや集計について扇谷健司審判委員長は「キー・インシデントのところのミスに関しては、数字の作り方の話もあったが甘い方向にはいけない。それは真摯にやっているということの証明にもなる」と話した。

 全体的には改善傾向にあることがデータで示される形になった。扇谷委員長は「昨年よりちょっと良くなったを繰り返していくことが大切」と話し、サッカー自体の進化だけでなく選手のアスリートレベルも高まっていく中で、プレッシャーの懸かる際どい場面を見極める精度をさらに追及していくことを来季に向けた総括としていた。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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