横断幕で苦言「目標も成果もないこの現状」 浦和の不本意な1年…指揮官との食い違い

浦和は7位でシーズンを終えた【写真:徳原隆元】
浦和は7位でシーズンを終えた【写真:徳原隆元】

西川周作「(若手が)チャンスが得られそうなタイミングで出られないことも」

 浦和レッズは12月6日のリーグ最終節、川崎フロンターレ戦に4-0で勝利してシーズンを終えた。この1試合を見れば快勝だったものの、試合後にはファン・サポーターから苦言の横断幕が掲示されるなど、不本意なところの多い1年にもなった。

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 この最終節は、これまでの得点力不足がウソだったかのようにゴールラッシュを見せた。トップ下で起用されたMF中島翔哉が躍動して川崎の守備陣を混乱させたところにMFマテウス・サヴィオが動き出し、MFサミュエル・グスタフソンが正確なパスを通す。中盤のコンビプレーからグスタフソンが先制ゴールを決めると、後半には今季限りで退団のFWチアゴ・サンタナが惜別ゴールを決め、大卒ルーキーのDF根本健太はプロ初ゴール、大きな負傷から秋に入って復帰したFW安部裕葵がアシストを記録してと、望んだものを全て得たような試合になった。

 とはいえ、最終順位は7位で終わった。ラスト10試合の時点では首位と勝ち点7差と逆転の可能性も感じさせる位置につけていたが、そこからの8試合でわずか1勝でセットプレーの1得点のみと大きく失速した。第37節のファジアーノ岡山戦を来季加入内定で特別指定登録のFW肥田野蓮司(桐蔭横浜大)のデビュー戦ゴールで1-0の勝利、そして最終節と2連勝で終えたが、GK西川周作がトレードマークの笑顔ではなく「試合には勝ちましたが、シーズンを通してこのままではいけないという危機感があります」と話したのも自然な反応だろう。

 今季の開幕に向け、堀之内聖スポーツ・ダイレクター(SD)は「最大目標はリーグ優勝」と位置付けた。それを踏まえれば、堅守を持ち味とするチームを作るマチェイ・スコルジャ監督に求められたのは勝ち点を奪い取るための得点力を確保することであり、長丁場の1年を戦い抜くため厚みのあるチームを作るための選手起用でもあっただろう。しかし、指揮官は「クラブ・ワールドカップ(W杯)を見据えて」という言葉を、守備を優先した配置やメンバー固定で戦う根拠として繰り返した。この食い違いにはチーム内で疑問を呈した選手もいたし、出場機会を求めてチームを離れる選手も相次いだ。

 選手起用も含むチームのダイナミズムが明らかに欠けたなかで進んだシーズンについて、西川は「(若手が)チャンスが得られそうなタイミングで出られないこともありましたし、クラブとしても考える必要があります。若い選手が活躍してくれるのはベテランになった自分にとっても良い刺激になります。そういった平等な競争、ピッチで見せた結果で試合に出られるという環境は、今後も大事にしていくべき」と意見を話した。

 例えば、中島は今季45分以上のプレータイムを得た公式戦では7試合で3ゴールを奪い、最終節でもアシストを記録した。前述のラスト10試合で3勝したゲームの共通点は固定し続けてきた外国人センターバック2枚ではなく根本をスタメン起用したこと。4月半ばからの5連勝もグスタフソンやFW松尾佑介、DF石原広教といった開幕から出場機会のなかった選手を起用したタイミングだった。スコルジャ監督は「もちろん、今シーズンの私の判断で良かったものもそうでなかったものもあったと思います」と話したが、起用法と裏腹な結果が目の前に広がった側面もあった。

 もちろん、試合内容という点でも「ゾーン3(攻撃の最終局面)での精度」という課題が繰り返し発言され続け、改善しきれないまま終わったこと。そこに至るまでの後方からどうやって前進していくかの質が高まらなかったことや、標榜したハイプレスの機能性が上がらなかったことなど課題は多かった。そうしたなかで迎えた第34節の横浜F・マリノス戦は前半だけで0-4と崩壊し、後半からファン・サポーターはチームへの応援チャントを歌わなくなった。それは、岡山戦で肥田野がゴールするまで続いた。

 それだけのことがありながら7位で終えられたのは、ホームでリーグ2位の勝ち点42を稼いだことが大きい。裏を返せばアウェーでは勝ち点17にとどまったが、1年間を支えたサポーターから最終戦後に「筆頭株主はフットボールクラブとしての目標も成果もないこの現状をどう思う? 何十年も繰り返される戦略なき経営陣の人事は何が目的?」と、クラブの体制や体質そのものに対する疑問も呈された。

 来年はシーズン移行に伴い半年間の特例的なリーグ戦があり、夏以降に本格的な1年間のシーズンがある。前例のないことだけに、良い形で乗り切るには現場だけでないクラブ全体の力も求められる。浦和には短いオフの間にどれだけその準備を整えられるかが問われることになりそうだ。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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