日本代表から届くLINE「完全に置いていかれてる」 得点&アシスト王も…J入りへ“就活中”「最後まで」

名城大4年FW松永悠碁「ステージを上げることが今年の義務」
東海学生サッカーリーグ1部入れ替え戦は、1部・10位の名古屋学院大学と2部・3位の名城大学の間で行われた。
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2部の名城大が1部昇格をするための条件は勝利のみ。引き分けも許されない中で、2部リーグで2年連続得点王(17ゴール)とアシスト王(8アシスト)のダブルキングとなったエースストライカーの松永悠碁が圧巻のパフォーマンスを見せた。
左サイドハーフとしてスタメン出場をした松永は0-0で迎えた62分、ゴール右中央の位置でFKを得ると、大きく深呼吸をしてゆっくりとボールをセットした。
「前のFKで狙い通りの場所に行かなかったので、一度冷静になって1本のキックに集中しようと思った」
ゴールまでの距離はおよそ25m。助走幅を取って顔を上げるとはっきりとコースが見えた。あとはそこに自慢の右足で正確に打ち込むだけだった。勢いよく加速をして右足を振り抜くと、ボールは美しい軌道を描いで、少しドライブをしながらゴール右隅に突き刺さった。
均衡を打ち破るゴール。そして後半アディショナルタイム7分、自陣の守備からカウンターを仕掛けた名城大は交代出場のMF佐藤竜暉がドリブルで敵陣まで運んで行くと、左サイドを駆け上がった松永へパス。残り時間は僅か。そのままコーナーに運んで行ってボールキープする持ち運びをしたが、相手DFがそれを防ぐために寄せてきたのを見て判断を変えた。
「少し左に持ち出したら相手が食いついてきて、中央が空いた。GKを見たら中央にいる味方に引っ張られて少し前に出ていたので、そのままカットインしてニアを打ち抜けば入ると思った」
守りに入るより、とどめを刺せばいい。エースストライカーの本能だった。カットインして一瞬だけ中央に走っていた味方2人にパスを出す素振りを見せてから右足一閃。ボールは1点目のFK同様に鋭い軌道を描き、戻りながら必死で伸ばしたGK和泉空良の手に当たった時にはすでにゴールラインを割っていた。
そしてその1分後、タイムアップのホイッスルが鳴り響き、名城大の8年ぶり3度目の1部昇格が決まった。
「レギュラーやベンチメンバーの多くが下級生で、僕ら4年生が後輩たちの戦うステージを上げることが今年の義務だと思っていました。自分のゴールで決めたいと思っていたので、それが出来たことが素直に嬉しいです」
松永が言うように名城大は1年生が4人、2年生が2人とスタメンの大半を占める若いチーム。その中で絶対的エースとして牽引してきた意地を最後の最後まで貫き通した。
この1年だけではない。東海2部では2年時に14ゴール(得点ランキング2位)、3年時に16ゴール(得点王)と7アシスト(アシストランキング2位)、そして今年は前述した通り、得点王とアシスト王に輝き、リーグ通算47ゴールという圧倒的な数字を残した。
今でも刺激を受ける2人の存在
これで大学サッカーは幕を閉じたが、松永のサッカー人生はこれで終わりではない。まだプロ入りするための挑戦の最中でもある。
7月にJ2・水戸ホーリーホックの練習に参加をし、10月、11月とリーグ戦と参入戦の合間を縫ってJ3の4クラブの練習に参加をした。まだ正式オファーは届いていないが、強烈な両足のキックの精度とパワー、ボールコントロール能力、得点感覚は突き抜けた武器を磨きながら、課題であるオフ・ザ・ボールの動きや守備面を日頃の練習から意識高く取り組んで、徐々に質が上がりつつある。
「最後の最後までプロになることを諦めるつもりはありません。確率が少なくても、ゼロになるまでは絶対に諦めないし、上手くなるためにやるべきことはとことんやり続けたいと思っています」
ここまでプロに強い執念を持っているのには訳がある。それは岐阜・帝京大可児高時代に「強力トライアングル」として攻撃を牽引してきた仲間の存在だ。1人は今や日本代表の主軸クラスになろうとしているDF鈴木淳之介(コペンハーゲン)で、もう1人は明治大4年生で来季から鹿児島ユナイテッド入りが内定しているMF三品直哉だ。
高校時代はボランチの鈴木、右MFの三品と共に破壊力ある攻撃を構築し、3年時に松永はプリンスリーグ東海得点王に輝き、第100回全国高校サッカー選手権でも2戦連続ゴールをマーク。チームを牽引してきたが、鈴木は高卒プロになって日本代表に、三品は関東大学サッカーリーグ1部の強豪・明治大で躍動をしてプロ入りを手にした。
「完全に2人に置いていかれている。もちろん僕の実力不足なのは間違い無いですし、2人が本当に努力を重ねてきたからこその結果で、尊敬しかないのですが、やっぱり負けたくない。淳之介もたまにLINEでエールをくれますし、本当にあそこまで上り詰めても謙虚で、優しくて、芯がある人間。直哉もそうで、選手としても、人としても刺激を受けますし、ただ刺激を受けているだけで終わりたくないんです」
1部昇格という結果はゴールではなく、通過点。自身のサッカー人生をまだまだ熱いものにするためにも、松永悠碁の目はまだゴールに飢えているし、まだまだサッカーに飢えている。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。




















